「中国、日本侵攻のリアル」

 

先日、読了した

 

 が、防衛問題を考える上でなかなか興味深く参考になるものがあり、対談者の1人である岩田元陸上幕僚長が以前に書いた本を読んでみました。

書名は刺激的ですが、至って実務的な内容で、中国が、台湾とともに尖閣先島諸島を標的とし、ハイブリッド戦の手法を駆使して上陸、占領してくるというシミュレーションを紹介しつつ、日本の防衛が抱える様々な問題点を検証し、提言を行っています。

その中には、にわかには賛成しかねるものもあるものの、自衛隊を、有事を想定し十分な抑止力を持つものとすることで、侵略を防止し、有事の際には効果的に防衛に当たることができるという著者の主張は十分に妥当、合理的なものだと思いつつ読み進めました。

著者は憲法改正により自衛隊を明文で認めるべきとしますが、既に、確立した解釈により自衛隊の合憲性は揺るぎない状態になっており、そこに議論を集中させ不毛な論争を繰り広げるよりも、著者が具体的に指摘、提言するような点を、必要な範囲内で実現していくほうに(法改正も含め)進めるほうが建設的だと思います。よく、9条改正論者が改正反対論者を批判して、9条があれば敵が攻撃しないと思っている、といったことを言いますが、9条に自衛隊が盛り込まれれば国が守れるわけでもありません。

それとともに、米軍の指揮命令系統に組み込まれ一体化する方向で進んでいる現状が、果たして日本の国益にとって望ましいのかどうかも、常に検証されるべきでしょう。両国間の日米安保体制は堅持すべきであるとしても、過度に関係が緊密化しすぎることで、他国の疑い、反発と招き日本を危機に陥らせる側面も出てきます。

日独伊三国同盟を締結することで、米英を敵に回し、特に米国とは決定的に対立し、ハルノートを突きつけられ開戦に追い込まれた歴史の教訓に、我々は大きく学ぶ必要があります。当時、ドイツドイツと草木もなびくと言われた状態で、「バスに乗り遅れるな」とドイツに追随することが日本全体で疑問視されなかった結果がどうなったか、冷静に考えてみることも必要です。

当時、日本が過度に独伊との関係を緊密化せず、米英との関係改善を図っていれば、少なくとも日米開戦やその後の悲惨な展開は防げた可能性があります。

そういったことも考えつつ、じっくりと読めた一冊でした。