「戦争という選択」

 

防衛大学校准教授であった著者による大著で、出てすぐに買って読まねば読まねばと思っていたのですが、全382ページという分量でなかなか読めず、今月になってやっと通読しました。

日米開戦がテーマですが、明治後の日本の歩みから説き起こしていて、歴史での日米開戦を見る上で、見方に厚みが出てくるように感じられました。ただ、ここが結構長くて、かなり辛抱強く読み続ける必要があります。

当時の日本が日米開戦という誤った選択に至った原因を、本書を読んだ上で私なりに感じたことでざっくり整理すると、

・南部仏印進駐による米国による決定的な制裁(石油禁輸、資産凍結)を予想できていなかったこと

・日独伊三国同盟(特にドイツとの関係)にこだわり、それと距離を置くことで日米関係を改善することができなかったこと

・輸入資源を米英圏に依存している以上、米英との破局を回避するため、国力に見合った思い切った妥協(中国からの撤兵など)を行う決断ができなかったこと

 

であろうと思います。

現在の日本も、米国との「同盟」関係に立ちつつ、中国、韓国、北朝鮮といった近隣諸国や、北方領土問題に絡んでロシア、更には中国と緊張関係を強めつつある台湾との関係を、慎重に、間合いを取りながら構築していくべき状況にあります。単に、米国との緊密な関係を追求することは、かつての大日本帝国がドイツとの関係に拘泥、引きずられた末に致命的な状況に追い込まれていった轍を踏むものではないかという、歴史から教訓を学びつつ検討する姿勢は重要でしょう。

かつての日本は、日独伊三国同盟に引きずられて、それと対立関係にある米国を始めとする国々との関係構築に失敗し、国土は焦土と化し多くの国民が戦陣に散り戦火に倒れる結果となりました。そうならないためにも、本書が提示するような歴史やそこから引き出される教訓に学ぶことは、今日的意義があると、本書を読み終わりしみじみと感じています。