「裁判所は一体…」誤算の検察 捜査への影響必至

「裁判所は一体…」誤算の検察 捜査への影響必至(産経新聞) - Yahoo!ニュース

金融商品取引法違反容疑で再逮捕された日産自動車前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)らの勾留延長について、東京地裁が20日、認めない決定をした。東京地検特捜部の延長請求が認められないという極めて異例の事態に、検察幹部からは「ありえない」「特別扱いか」と憤りの声が噴出。再逮捕容疑だけでなく、ゴーン容疑者の会社資金の私的流用疑惑などの捜査にも影響が出るのは必至だ。

この記事が出た後、東京地検準抗告が棄却されたというニュースに接しました。特別抗告(本来、憲法違反や判例違反が理由)まではさすがにしないと思いますから、2回目の勾留については20日の満期で終了でしょう。

先日、今後の見通し、可能性について、

blog.yoji-ochiai.jp

とコメントしたのですが、私が想定した可能性の1つへと流れつつあるようですね。

勾留延長は、「やむを得ない事由」がないと認められませんが、当初の勾留、その後の再逮捕後の勾留で、合計30日も勾留しており、複数年分にまたがる有価証券報告書の虚偽記載(各年毎に別事件)とはいえ、その問題点はおそらく多分に年をまたがって重複する、実質的には「1個の事件」という色彩が濃厚と言えます。それを、再逮捕後の勾留についてまで延長というのは、やむを得ない事由があるとは言えないという裁判所の判断には合理性があります。準抗告も棄却されたということは、合議体の3名の裁判官も同じ考え方をしたということになりますから、ここは特捜部完敗ということでしょう。

勾留延長を却下するに際して、ほぼ確実に、担当裁判官と特捜部の主任検事は協議しています。その際、そういう状況の裁判官は、今後の余罪による再逮捕の可能性を聞くものです。現実的にそういう流れにあれば、延長を切る意味は乏しい(切っても再逮捕になる)ので、多少、日数を切っても延長は認めるということになりやすいものです。ばさっと切った、延長を認めなかったというのは、余罪について、間近に再逮捕できるだけのものが見出せていない可能性が高いと私は見ています。

年内中の焦点は「保釈」ですが、このような裁判所の本件に対する厳しい見方を踏まえると、その可能性は現実的にありそうです(私自身は、高い可能性があるとまでは見ていないのですが)。

その際に視点として重要なのは、本件で、「虚偽」かどうかという客観面は、法令の解釈を前提とした報酬の確定性という、専ら評価の問題になり、それについて罪証隠滅の余地はないことです。あとは、被告人らの虚偽性への認識ですが、主要な証人はほとんどが日産の社内にいて、しかも、司法取引といった手法も駆使されて証拠収集は相当程度進捗しているはずです。日産から被告人らが放逐された現状(取締役ではありますが)で、日産関係者への働きかけや通謀は考えにくいものがあります。そうすると、否認しているとはいえ、罪証隠滅の恐れは限定的なものであり、保釈金を高額に設定するといった措置を講じることで保釈は可能であると、裁判所が判断する可能性はそれなりにあるでしょう。

 諸外国から様々な批判が浴びせられる中、年内の保釈も視野には入ってきている状況と言ってよいと思います。年末を目前にして、重大な局面に差し掛かりつつあります。