中東「資金工作」解明へ検察慎重派説得 カルロス・ゴーン容疑者再逮捕

中東「資金工作」解明へ検察慎重派説得 カルロス・ゴーン容疑者再逮捕(産経新聞) - Yahoo!ニュース

ところが、検察上層部は「これ以上の立件は不要」と慎重姿勢を崩さなかった。「無理して一部でも無罪が出たら組織が持たない」という理由だが、その背景には、裁判所が特捜部の捜査に厳しい姿勢を取り続けていることもあった。

オマーンレバノンなどに求めた捜査共助も、期待した回答は得られず、捜査は難航したが、特捜部は日産の協力を得て中東関係者から事情聴取を重ね、資金支出の決裁文書や資金の送金記録などの関係証拠を積み上げ、容疑を固めた。

特捜部は「サウジアラビア・ルートだけでは、部分的に弁解が認められる可能性もある。中東での資金工作の全体像を解明しなければ、逆に無罪が出かねない」と上層部に主張し、逮捕にこぎつけた。

 保釈後とか、事件によっては刑務所に収監後に、余罪で再逮捕ということは、捜査の都合により起きてくることが時々あります。頻繁にあることではありませんが、稀、というほどでもないというのが、私の経験上の感想です。

特捜部が手がける、この種の事件(特別背任等)では、特捜部がいけるという判断をしても、上で、広い意味での起訴価値を含め、慎重論が出ることがあります。いけるという判断が、積極論にはあっても、やってみなくてはわからない要素、評価を伴う要素はどうしてもつきまといますから、「そこまで無理をするな」という慎重論は、検察の上では出やすいものです。特に、既に本件ではサウジアラビアへの同種出金が特別背任罪として起訴の対象になっていて、オマーンルートも起訴すれば、海外も絡む「同時二面作戦」状態になりますからそれだけ負担もリスクも増えることになり、それだけに慎重論が根強かったことは容易に想像できます。

では「なぜ」立件に踏み切ったのか。そこは、証拠への評価や、今後の公判立証上のメリット(記事にあるような)などが総合的に見られたということでしょう。4月中旬にゴーン氏が記者会見をしようとしていた、その口封じ目的ではないかという見方があるようですが、口封じのために俄かに立件できるような事件ではないものの、最終的に「やる」という判断に踏み切る上で、検察部内で微妙にそこも影響したことは、可能性としてあり得ないわけではないと思います。

同種の事件を繰り返している、というパターンでは、そのうちの一部だけを切り取ることで、事件の全貌が出しきれずに、検察立証上、マイナスになることがあります。例えば、連続放火事件で、1件だけの起訴では、裏付けが弱かったりアリバイの主張が出たりして立証が難渋するものでも、2件、3件と起訴することで、相互に、前足、後足関係になったり、うち1件への裏付けが別の件への裏付けにもなる、ということが起きてきます。そのように、複数の同種事件を立件、起訴対象とすることで、相互に支え合う形で立証が奏功することがあります。特捜部は、サウジアラビアルートとオマーンルートに関連性があり、双方を立件、起訴することが得策と考えたということも、十分にあり得ることでしょう。

特捜部は、起訴できると踏んで逮捕に踏み切るものであり、起訴は既定の方針でしょう。サウジアラビアルートとは別件であり、勾留が認められる可能性も高いと私は見ています。しかし、勾留延長や保釈への従前の裁判所の対応を見ていると、今後、勾留延長まで認められるかどうかは微妙さを感じます。特捜部としては、勾留延長請求せず、勾留10日で起訴を覚悟して臨んでいるかもしれません。

今後の捜査が注目されます。