GPS捜査:「令状なしは違法」大阪地裁が証拠却下

http://mainichi.jp/select/news/20150605k0000e040195000c.html

長瀬裁判長は、このGPS捜査について、目視のみの捜査とは異質で、任意捜査と結論づけられるものではなく、「対象者のプライバシーを大きく侵害し、強制処分に当たる」と指摘。令状なしに実施した場合は違法と判断した。
また、広域窃盗事件を対象にした今回の捜査内容に照らすと、「GPS捜査について相当程度、令状が発付された可能性が十分にあったのに、これを怠った。警察官の令状主義軽視のあらわれだ」と厳しく批判した。
そのうえで、長瀬裁判長は、検察側が証拠提出した捜査報告書について、証拠能力を否定した。

この点については、以前、

捜査対象車にGPS端末 警察が無断で設置、各地で発覚
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20130818#1376813044

とコメントしたことがあり、先月、行われた日本刑法学会でも、

日本刑法学会第93回大会(於専修大学)
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20150526#p2

「監視型捜査とその規律」をテーマとした分科会で取り上げられていて、注目されているところで、こうした判断が裁判所で示された影響は大きいでしょう。
さる筋経由で、決定の内容を知ることができたのですが、上記の記事にもあるように、裁判所は、こうしたGPS捜査のプライバシー侵害の程度が高いことや、検証許可状を取得できるのに取得していないことを大きく問題視し、令状主義を没却する重大な違法と捉えて違法収集証拠として排除していて、本ブログでの過去エントリーで取り上げたことがある、宅配の荷物を無令状でX線検査したケースが違法とされた最高裁判例にも沿った手堅い判断をしているという印象を受けるものがありました。
今後、合法、違法の両方の判断が各地の裁判所で出る可能性があると思いますが、私自身の印象としては、今後、上記のエントリーで

この米国最高裁判例が、日本における同種捜査の評価に影響するとすれば、プライバシー侵害の程度が高い、相当性に問題がある手法であり、原則として令状によるべきで、無令状によることが許されるのは、高度な必要性、緊急性(例えば、誘拐犯人使用である可能性が高い車両を発見し令状を取得する暇もなく咄嗟にGPS端末を取り付けるなど)がある例外的な場合に限られる、といった方向で考える、ということが、可能性としてはあるのではないかと思います。

とコメントしたような方向で進む可能性があり、また、その方向性が望ましいのではないかと感じるものがあります。今後の裁判例の動向を注意して見ていく必要があるでしょう。