終の信託

映画公開時には観ることができずにいたのですが、やっと観ることができました。終末期医療を巡るものだけに、なかなか重いものがありましたが、最初から最後まで飽きずに観られて、なかなかよくできた秀作であると感じました。
(以下、ネタばれ注意)
主人公の女性医師(草刈民代が演じる)は、担当する患者から、最期は任せると言われ、延命治療を打ち切る措置を講じるものの、かえって、患者が苦しんで暴れ出し、慌てて積極的に死期を早める措置を講じて、それを殺人として捉えられ、有罪(執行猶予付きながら)となります。この映画では、女性医師の苦悩や殺人と捉えられた措置への経緯、当時の状況をリアルに描き出して、終末期医療の難しさや、明確な基準がないままでいる現状の問題点を問うていると感じました。現状では、徹底して生を尊ぶべきだ、というのは、この作品に登場する検事の考え方で、1つの意見ではあるでしょう。ただ、それでは、尊厳ある死を迎えたいという患者の意向は十分には反映できないことになります。自己決定権というものを最大限尊重していけば、いかに生きるか、だけでなく、いかに死ぬかについても、最大限に本人の意思が尊重されるべき、という流れになるのは必然で、この作品は、そういった問題点をうまく浮き彫りにしながら、敢えて答えを出さず、観る人に判断を委ねていて、考えさせられるし、うまく作っていると感じました。
人は、いずれ必ず死すべき存在で、いかに死んでいくかということも、自分なりに考えなければならないと感じました。