大阪簡裁、暴言警部補に異例の「略式不相当」判断

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101228-00000582-san-soci

大阪簡裁(西倉亮治裁判官)は28日、略式命令がふさわしくないという「略式不相当」の判断を下した。簡裁が検察側の略式起訴を退けるのは異例。今後は簡裁で通常の公判が開かれる。
略式起訴と略式命令は、簡単な事件について非公開の書面審理だけで罰金刑などを言い渡す手続きだが、簡裁が複雑な事件だと判断した場合などは公判を開くと定められている。

刑事訴訟法では、463条1項で、

前条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。


と定められています。記事にもあるように、裁判所が略式不相当と判断することは、極めて珍しく、この事件自体や略式手続によることに、裁判所がかなりの問題性を感じたことがうかがえます。
何をもって不相当と判断されたか、現段階では推測するしかありませんが、

1 実態としては特別公務員暴行陵虐罪が問題とされるべきであるのに脅迫罪という矮小化した評価になっていること
2 刑事司法に携わる警察官による悪質な事件で、様々な厳しい批判が加えられているのに、罰金刑ではあまりにも軽すぎること
3 国民の注目が集まる中、通常の公判を開き、国民の前で審理を行い判決を出すべきこと

といった事情が、裁判所によって考慮された可能性はあるでしょう。
今後は、大阪簡裁で審理が進められることになりますが、本件で問題になっている犯罪類型では、簡裁では罰金刑までしか科せないことに、裁判所法上、なっているものの、裁判所法33条3項では、

簡易裁判所は、前項の制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは、訴訟法の定めるところにより事件を地方裁判所に移さなければならない。


と定められていて、今後、本件が罰金不相当と考えた大阪簡裁裁判官により、事件が大阪地裁へ移送されるということも考えられるでしょう。
さらに言えば、大阪地裁への移送後、裁判所が、現在の脅迫の訴因を特別公務員暴行陵虐罪へ変更するよう、勧告、あるいは訴因変更命令(刑訴法312条)を発する、ということも、視野に入れておく必要があると思います。
大阪地検大阪府警が結託して、軽い処分でお茶を濁し不良おまわりをかばい通そうとしたものの、裁判所の受け入れるところにはならなかった、国民の厳しい批判が裁判所には辛うじて通じ、こういった判断になった、ということでしょうか。
今後も公判を厳しく注視し、こういった不良おまわりがのさばらないよう、心ある人々で監視を強めて行く必要があるでしょう。