県警、初めて詐欺容疑適用 検察、偽名でゴルフ場利用の暴力団員を不起訴

http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100727/CK2010072702000175.html?ref=rank

逮捕容疑は昨年8月〜今年1月、暴力団の関係者の利用を禁止している県東部のゴルフ場で申し込みカードに偽名を記入。今年1月27日には、同ゴルフ場のフロント係に暴力団員などではないと信じ込ませてプレーした、などとされる。
詐欺罪は財産的な価値がある物品のほか、「財産上の利益」をだまして得る行為も処罰の対象となる。捜査の焦点は、ゴルフ場でのプレーという財産上の利益を、3人が不法に得たと解釈できるかどうかだった。

静岡地検検事の落合洋司弁護士によると、警察当局が暴力団の取り締まりを強める中で近年、身元を隠してマンションなどを賃借した暴力団の関係者が詐欺容疑で立件、有罪とされる例も出てきている。落合弁護士は「こうした流れの中で県警は今回、ゴルフ場の事件を詐欺容疑で立件したのでは」と指摘する。
地検富士支部は不起訴処分とした理由を明らかにしていないが、落合弁護士は「ゴルフ場の経営者に金銭的な実害がない点が、容疑者に有利に考慮された結果ではないか」と推測。ただ、暴力団の活動は悪質化の一途をたどっており、「今後、同様のケースで立件や処罰の在り方も議論していくべきだ」と強調した。

詐欺罪が成立するためには、相手方に財産的損害が必要と解されていて、記事にある事件のように、相当な対価が支払われている場合に、何を財産的損害と見るかについては、

1 個々の占有ないし財産上の利益の喪失であるという考え方(形式的個別財産説)
2 交付ないし処分行為の前後において被害者の財産状態に変化が生じることを要するという考え方(実質的個別財産説)

があって、1が通説、判例とされています。1を前提にすると、ゴルフ場側に、暴力団員とわかっていればサービスを提供しなかったという関係が認められる限り、財産的損害を肯定し詐欺罪の成立を認める、という考え方もあり得るでしょう。警察は、おそらく、そういった考え方に立って立件したものと推測されます。
しかし、実務上は「実害」ということを重視する面があるので、そのあたりの事情について、検察庁が起訴価値がない、あるいは乏しいと見た可能性はあるでしょう。
暴力団排除の流れが進む中で、こういった立件は今後も増える可能性が高そうです。