裁判員制度 半数以上が「辞退」問い合わせ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090209-00000599-san-soci

最高裁によると、寄せられた電話のうち「どのような場合に辞退できるのか」など、辞退についての問い合わせが約56%だった。具体的には「(辞退が認められる)70歳以上であることをどう証明すればいいのか」のほか、病気やけが、仕事、介護などを理由に辞退できるかどうかを尋ねるものが多かったという。

要するに、かなりの人がこの制度を嫌がっていて、やりたくないと思っているということでしょう。制度が始まる前から、既に終わっている、ということではないかと思います。
いくら崇高な理念、理想に基づく制度であっても、その中で携わる人々にきちんと支えられるものでなければ、絵に描いた餅のようなもので、成功するはずがありません。
そもそも、日本の刑事実体法(刑法など)は、故意、目的など主観的要素が多く、構成要件の内容も複雑で、正当防衛、緊急避難などの違法性阻却事由の要件も複雑になっているなど、素人がぽっと入ってきて判断が下せるようには、元々、できていません。そういうことを想定していないと言ってもよいでしょう。例えば、故意の中にも確定的故意、未必の故意、概括的故意、条件付き故意(これはやや特殊ですが)など様々なものがあったりします。その上、犯罪成立(有罪)が肯定できても、法定刑の幅がかなり広いので、その範囲内でどのような刑を科すかということについて、素人では判断が困難です(プロでも困難さを感じることが多く、当然と言えば当然ですが)。
そういった実体法の様々な問題を放置したまま、裁判員制度を導入しようなどと考えたところに、そもそも無理があり、国民が不安を感じて辞退したいと考えるのも当然で、破綻する可能性は極めて高いと言えるでしょう。一国の、それも日本のような歴史と伝統ある先進国家の刑事司法が、理念や理想に振り回され失敗必至の制度を取り入れて予想通り無残な失敗を迎え破綻する、というのは、おそらく歴史的にも稀有なことで、人類の失敗の歴史に新たな1ページを書き加え日本の歴史上の一大汚点として、日本列島に人が住み続ける限り永く語り伝えられることになりそうです。