NHKスペシャル選 「安全の死角・検証回転ドア事故」

5日午後10時から、NHKで放映されていたものを見ました。再放送でしたが、以前の放映の際、見逃しており、また、たまたま、六本木ヒルズ回転ドア事故の東京地裁判決を読んで、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi_reserch/20060504/1146747220

をアップした直後でもあったので、興味深く見ました。
起きた事故について、その原因を解明し、今後の再発防止へ結び付けようという努力が地道に積みかさねられていることが紹介されていました。
日本の場合、刑法上、業務上過失致死傷罪が定められている関係で、業務上の過失に対する刑事処罰が、諸外国と比較しても厳しいほうではないかと思います。それ自体を、即、よくないこととは言えませんが、確かに、そういった制度の下では、事故の原因を究明し、再発防止へ結び付けるという動きではなく、処罰を免れるため、原因をむしろ隠ぺいしようという動きが出たり、そこまでしなくても、原因から目をそむけ触らない、といったことになりやすいということは言えると思います。
刑法上の業務上過失は、「業務上」ということで、重過失と同等の位置づけになっていますが、この点を再検討するのも1つの方法ではないかと思います。業務上の過失の中で、真の意味での重過失(故意に匹敵する著しい注意義務違反)と、そこまで至らない通常過失を分け、前者については従来のような処罰で臨む一方、後者については罰金刑(略式命令の上限が100万円に引き上げられますから、100万円程度)にとどめ、身柄の拘束も真にやむをえない場合(住居不定など限定された要件)に限って、後者については、事故発生後の原因究明への努力が、厳罰へとつながらないような状況を作っておくのも1つの方法ではないか、と思います。
そうすると、今までよりも刑事処罰が軽くなる分、被害者や遺族の不満が高まる恐れもありますが、原因究明への非協力や被害者等へ慰謝の措置不十分、といった事情により、例外的に、罰金刑を加重して体刑(懲役刑、禁錮刑)を科する余地を残しておくべきかもしれません。
刑事実体法に対する見直しが進んでいますが、過失犯処罰の在り方についても、今後、議論、検討が行われるべき必要性を感じます。