交番自殺の警官、異例の書類送検 「東京駅前」を重視

http://www.asahi.com/national/update/0206/TKY200802060112.html

巡査部長は昨年12月19日午前9時5分ごろ、東京駅構内にある同交番の机付近で、貸与されていた拳銃1発を右側頭部に発射した疑い。弾は頭を貫通し、外に向いた交番の窓付近に当たったあと床に落ちた。
交番は丸の内北口改札を出てすぐのところにあり、当時、目の前を通勤客らが歩いていた。銃刀法は道路、公園、駅などやその他不特定多数の人が使う場所、乗り物での銃発射の禁止を定めている。
警察官が警察署や交番で拳銃自殺した例はこれまでもあるが、トイレや奥の仮眠室、庭など閉ざされた空間が現場の場合、一般的に発射罪は適用されないという。

銃刀法では、

(発射の禁止)
第3条の13
何人も、道路、公園、駅、劇場、百貨店その他の不特定若しくは多数の者の用に供される場所若しくは電車、乗合自動車その他の不特定若しくは多数の者の用に供される乗物に向かつて、又はこれらの場所(銃砲で射撃を行う施設(以下「射撃場」という。)であつて内閣府令で定めるものを除く。)若しくはこれらの乗物においてけん銃等を発射してはならない。ただし、法令に基づき職務のためけん銃等を所持する者がその職務を遂行するに当たつて当該けん銃等を発射する場合は、この限りでない。

と定められ、法定刑は、無期又は3年以上の有期懲役と、かなり重くなっています(31条)。
記憶では、走行中の車両内(それ自体は密閉された空間)で発砲行為に及んだ、という事案で、上記の要件に該当すると認定され、発射罪成立が肯定された事件があったと思います(記憶だけでコメントしているので、多少、不正確かもしれません)。
上記の警官による自殺のケースでは、おそらく、交番自体が、「不特定若しくは多数の者の用に供される場所」に存在することが重視され、発射罪による送致、ということになったものと思われます。
被疑者死亡で不起訴になることが確実で、公判で検討されることはありませんが、発射罪の成否を考える上で興味深いケースと言えるように思います。

追記:

コメント欄でご指摘のように(ありがとうございます)、最一小決平成17年4月18日刑集59巻3号302頁でした。

最高裁時の判例 5―平成15年~平成17年 (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例 5―平成15年~平成17年 (ジュリスト増刊)

の385ページ以下で、この判例の解説があり、その中で、前田巌・最高裁調査官(当時)により、

自動車内が閉鎖空間であるといっても、けん銃等の弾丸が窓ガラスや車体を貫通して車外に飛び出すことは容易に想定できるところである。そうすると、その車内でのけん銃等の発射は、車外での発射と同程度の危険性及び不安感を一般人に与えるものといえるのであり、当該車両が走行、停車する場所が、道路その他不特定又は多数の者の用に供される場所であるならば、車内もその所在する場所の属性から隔離されたものではなく、けん銃等発射罪の場所的要件に欠けるところはないといってよいであろう。そして、本罪が抽象的危険犯であることに照らせば、本件けん銃が自動車の外に飛び出す危険があるかなどは、当該車両が装甲車であったなど、特殊な事情のある場合を除けば、問題とする必要はないように思われる。

とされているのが参考になります。おそらく、このような考え方に立脚した上で、上記記事にある事件でも発射罪が認定されたのでしょう。