元運転手に逆転有罪判決=懲役17年−幼児連れ去り殺害・名古屋高裁

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007070600041

1審無罪判決については、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060124#1138060306

とコメントしたことがありますが、名古屋高裁がどのような根拠で被告人を犯人と認定したかが注目されます。

追記:

愛知・豊川の男児連れ去り殺害、二審は逆転有罪判決
http://www.asahi.com/national/update/0706/TKY200707060071.html

控訴審では自白の信用性や間接証拠の評価が争点になった。前原裁判長は、事件当夜、翔ちゃんの乗っていた乗用車の近くに田辺被告のものとみられる軽乗用車の複数の目撃があり、田辺被告が日頃、同駐車場に駐車して寝ていたことから、「被告の軽乗用車に他ならない」と認定。
田辺被告が任意捜査の段階から自供し、当時の駐車場の状況や、翔ちゃんの身体的特徴、海に落とした場所など客観的状況も符合するなどとして、自白の任意性、信用性をいずれも認めた。
自白の変遷や矛盾も「罪から逃れるため」とし、がけ下から海に落とされた翔ちゃんの遺体が、石で損傷していなかったことや、被告の車内から翔ちゃんの毛髪などの痕跡が見つけられなかったことなどについても「自白と矛盾するとはいえない」とした。
弁護側は、目撃は「被告のものとは別の同車種の車に過ぎない」と反論。海への落とし方についても、翔ちゃんの遺体にがけ下の石でできるはずの外傷がなく、「捜査側に変遷させる必要性があった」とした。「被告は警察官から怒られ、脅されて、犯行を認めさせられた。自供は信用できない」としていた。
しかし判決は、投棄方法については「詳しく説明させていったもので実質的に変遷はない」と弁護側の主張を退けた。

判決文も証拠も見ていない立場からは、この判決の当否を軽々に論じられませんが、「任意捜査の段階から自供」という点が重視されているではないか、という印象を受けます。一旦、裁判所が被告人の犯人性について強烈な心証をとってしまうと、自白の矛盾、変遷といったことも、「罪から逃れるため」「自白と矛盾するとはいえない」「詳しく説明させていったもので実質的に変遷はない」などと、次々と有罪方向で合理化されて行く、というところに、恐いな、と思う人(特に弁護士で)は少なくないでしょう。
事実認定を行う際に、大別して、個々の証拠を分析的、綿密に見て行く手法と、個々の証拠の細かい矛盾等をあまり気にせず総合的に見て行く手法があり、先日、お亡くなりになった渡部保夫氏(元裁判官)のような方は、前者の手法ですが、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070413#1176428060

最近、後者の手法が徐々に息を吹き返しているような印象を受けます。刑事弁護の観点からは、なかなか厳しい状況になりつつある、ということは言えるように思います。

元運転手に逆転有罪判決=自白の信用性認める−幼児連れ去り殺害・名古屋高裁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070706-00000064-jij-soci