31年前の殺人事件、元受刑者の再審開始決定 熊本地裁

http://digital.asahi.com/articles/ASJ6Z0073J6YTIPE04K.html

再審請求審で弁護団は、判決が凶器と認定した小刀の形状と男性の傷が一致しないことを示す鑑定書など約120件を提出。小刀の柄に巻いて使ったとされるシャツの一部が、「燃やした」とする宮田さんの自白内容に反して存在することが初めて明らかになり、弁護団は「自白の信用性が揺らいだ」と主張していた。

過去に冤罪と判明したり、その疑いがあるとされた事件で多いのが、自白以外にさしたる証拠がなく、しかも、その自白の内容に客観的に認定される証拠との矛盾があったり変遷してたりして、その信用性(その前提となる任意性も含め)問題がある、というものです。その意味では、先日、地裁段階で有罪判決が宣告された今市事件

栃木女児殺害 判決の影響は
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20160412#1460456509

も、同様の証拠構造を持つ事件と言えるでしょう。
自白が存在することで、その後、否認に転じていても、裁判所は、具体性とか迫真性といった「心証」で有罪方向に傾きがちです。しかし、自白がどのように「作られる」ものか、その過程においては、客観証拠に沿うように取り調べる側から誘導もされがちであり、また、被告人に有利な証拠も隠ぺいされがちであるといった危険性に思いを致した上で、こういったタイプの事件には十分過ぎるほど慎重に臨まなければならないということを、上記事件の報道に接しつつ痛感します。
昭和も終わり頃になっての、昔の事件だから雑でした、では済まないもので、今後の行方に注目すべきであるとともに、その問題点は幅広く知らしめられて今後の事件へと生かされるべきでしょう。