http://www.asahi.com/national/update/0502/TKY200705020369.html
捜査側が接見時のやりとりを容疑者側から聞き取って作成した調書は75通。「『あなたは(現金を)もらっていないんでしょう。否認しなさい』と(弁護士に)言われた」「『(現金を授受した)会合はなかったと言いなさい』と(弁護士に)言われた」などの内容だった。
あれだけデタラメで、暴走するだけ暴走し、何のブレーキもかからなかった捜査に対し、弁護人が行うアドバイスとしては、極めて適切かつ妥当なもので、このような調書を75通も作っている暇があったら、検討すべき重大な問題点について検討を尽くすべきだった、としか言いようがありません。
捜査機関が思い描いた事件の筋、ストーリーが間違っていれば(本件は正にそういうケースですが)、それに沿った自白が出ない、取れないのは当たり前のことで、虚偽自白が引き出せないことを弁護人のせいにして、有害無益な調書を75通も取る暇があったら、アリバイに関する捜査を徹底するなど、「誤起訴」を回避できるだけの適正な捜査を尽くすべきだったと思います。愚か者の愚かな所業と言うしかありません。
こういった重大な失態を犯した者すべてとまでは言いませんが、少なくとも、検察庁、警察で責任ある地位にいた者は、退職していれば鹿児島まで出向いて関係者に謝罪し、現職にある者は、謝罪した上で潔くその職を辞し、責任を取るべきでしょう。
内部文書によると、04年10月末から11月にかけて行われた県警側との公判対策をめぐる協議で、地検側は「(当時、調書化の)指示を出したことは承知しているが、懲戒申請のために『弁護士の悪性を引き出した』ということは口が裂けても言えない」と発言。「懲戒申請目的の資料収集との主張は、何の捜査なのかという反論を呼ぶし、国家賠償請求訴訟に影響を及ぼす」などとして、公判などで懲戒を意図して調書を作成した旨の証言をしないよう県警に求めている。
さらに地検側は「検事から指示があったこと、懲戒請求を考えていると言われたことも証言していい」としながらも、「あくまでも罪の立証に付随して出された指示だったと証言すべきだ」などと指導していた。
報道で、上記事件の公判の家庭における、検察庁側の、上記のような「あざとく」「姑息な」「指導」の数々が暴露されていますが、検察庁の捜査・公判活動というものが、罪なき者を罪人に仕立て上げ、善良な人々を無為に苦しめ続けるものだ、という強烈な印象を国民に与えるもので、極めて憂慮すべき事態だと思います。
以前から本ブログでも指摘していますが、捜査、公判というものは、情報を金で買えばそれで成り立つ、という安易なものではなく、多くの国民の真摯な協力があって初めて成り立つものです。国民の信頼が失われれば、捜査、公判の真相解明機能は次第に失われ、極めて深刻な事態になりかねないでしょう。
法務省、最高検は、上記のような「あざとく」「姑息な」「指導」の実態を徹底的に調査し、行き過ぎが認められれば厳しく処分するなど、適正な対応をすべきだと思います。