「被疑者ノート廃棄で防御権侵害」 松江地裁が無罪判決

http://digital.asahi.com/articles/ASJ1N5RQHJ1NPTIB00K.html

男性は捜査段階の取り調べ状況を記す「被疑者ノート」をつけていたが、勾留先の刑務所職員が誤って廃棄。防御権を侵害されたと訴えていた。

男性側は被疑者ノートの廃棄で取り調べの問題点を裏付ける資料が失われたとして、捜査段階の供述調書を証拠採用しないよう公判で求め、検察側が撤回する展開をたどっていた。

従来の刑事訴訟法における「防御権」に関する議論は、公判手続中において被告人の防御権が十分に保障されなければならず、そこが疎かになることで訴訟手続の法令違反を来す、裁判所の行動原理といった流れの中で論じられていたのではないかと思います。上記の事件では、そういった枠組みを超えて、捜査から公判において一貫して被疑者、被告人の防御権が十分に行使できる環境が存在しなければならず、それが損なわれることで(「防御権侵害」という状態が生じることで)、一種の審理無効のような状態が生じることもあり得る、といった捉え方がされている面があるようでもあり、かなり興味深いものがあるように感じられます。
被疑者ノートが失われたからといって(それも検察庁の非ではなく刑務所職員の非という状況で)、検察官が被疑者の供述調書を請求していながら撤回するというのもかなり異例で、公判の推移も含め、何が起きていたのか知りたい気がします。いろいろな意味で気になる事件です。