村上被告、ニッポン放送株「インサイダー」一転否認へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060916-00000001-yom-soci

コメント欄でもご指摘いただきました。ありがとうございます。次々とブログでコメントする出来事が起きて、連日、材料に事欠きません。
検察官をやっていた当時の私であれば、「当初否認し、自白に転じた被告人を、第1回公判前に安易に保釈すると、こういうことになる。」と、苦々しく思ったでしょう。今の私は、「この被告人を保釈するなら、検察官立証が全部終了して全面的に認めているあの被告人を保釈してほしい。」と思っています。立場が変われば、考えることも変わるものです。
それはともかく、上記の記事では、

村上被告側は、同放送株の買い占め情報を知った時期について、「ライブドア側が買い占め方針を取締役会で正式決定した05年1月下旬だった」とし、ほぼすべての取引がインサイダー取引に当たらないと主張するとみられる。

とありますが、この点は、以前、

「村上代表の会見、検察側と食い違う主張」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060606#1149555406

でも指摘したように、元々、問題になっていたところです。
あくまで推測ですが、村上氏側は、当初の会見での主張を、「無罪」の方向で展開して公判に臨むのではないか、と思われます。11月の時点で聞いた話は、とても実現するものとは思えず、少なくとも村上氏側の認識としては「重要事実」とは言えない、といった、認識も巧みに絡めた主張になってくる可能性があります。
上記のエントリーで、私は、

まず全面否認で臨んでみて、証拠関係からそれが無理だと察すると、鮮やかに方針転換し、一応認めはするものの、事件の中の、やや弱そうなところを巧みに突いたりしながら自らの悪質性のなさを強調し、あわよくば無罪を狙う、というのは、普通の素人にはなかなかできないことです。

と述べ、今、改めてその印象を深くしていますが、上記のような今後の公判での予想される主張は、自らの悪質性のなさをあわせて主張することにもなるでしょう。仮に自分が早期に見聞きしたことが重要事実に該当したとしても、自分自身はそこまで思い至らなかった、細部まで見聞きして関係者と綿密に打ち合わせ等を行った上でのものとは違い、仮に有罪だとしても悪質性は低い、という主張にもつなげやすい、という側面があると思います。
また、村上氏のように、能力があり、今後、再び世に出て働きたいと思っている場合、公判で全面的に非を認めました、私がすべて悪うございました、という形で裁判を受けるよりも、仮に有罪になるとしても、起訴自体に問題がありいろいろと主張したが裁判所に理解してもらえなかった、という経緯にしておくほうが、周囲の理解が得やすく、再起を図りやすい、という側面もあるでしょう(その作戦で進めようとして、再犯により元も子もなくしつつある人が最近いましたが)。
いずれにしても、この事件についても、今後、注視して行く必要があると感じています。