会社役員の贈収賄罪とはどんな犯罪なのかー汚れた原発マネー

会社役員の贈収賄罪とはどんな犯罪なのかー汚れた原発マネー(園田寿) - 個人 - Yahoo!ニュース

刑法上の収賄罪は、公務員が「その職務に関し」て、賄賂を収受・要求・約束の各行為が処罰されており、法定刑は「5年以下の懲役」です。このときに「請託」(具体的な要求)を受けていれば、法定刑は「7年以下の懲役」に加重されます。

会社法では、「不正の請託」を受けた場合についてのみ処罰され、しかも法定刑は「5年以下の懲役」以外の罰金刑が規定されており、軽くなっています。

園田教授も指摘されていますが、本件では肝心の「元助役」が死亡しており、仮に何らかの不正な請託につながるようなものがあったとしても、贈賄側の取調べができませんから(そもそも対向犯である贈収賄罪で一方が死亡していれば、事件化自体が実務的にはあり得ないでしょう)、そこでの立件はまず無理でしょう。

また、本件では関西電力の20名程度の幹部に金品が送られたと報じられていますが、そういった、バラマキ型、継続型の供与では、金の趣旨が曖昧になり、特に不正の請託といった点を立証する上では困難を来す可能性も高いでしょう。

かつて藤波元官房長官リクルート事件で受託収賄罪により起訴され1審で無罪(その後有罪)になったのも、継続的な複数の供与があって金の趣旨が希薄化し賄賂性に疑問が持たれたが故のことでした。

今現在、直ちに何らかの犯罪が成立するかよりも、目を向けるべきは、なぜ、このような不明朗な多額の金品の供与が、少なくとも数年にわたり続けられていたかということでしょう。供与対象が20名程度に上っており、そこには、「表に出せないお金の面倒を見てあげる」という性格も窺えるものがあります。政治献金、地元対策費等々、電力会社には、表に出せない様々な資金が必要となる面が昔から存在します。そういった悪弊、悪習が断ち切れずにずるずると関係が続いていたのではないか、というのは、あり得る可能性の一つでしょう。

「元助役」の、長年にわたる強い影響力から見て、こういった関係が、数年ではなく、遡れば昭和の時代から続いていたのではないか、そういう可能性も考慮されるべきだと感じます。

かつて、故・金丸信氏の脱税事件を端緒にしてゼネコン汚職事件が大々的に摘発されたことがありました。関西電力を起点とした不明朗な、政界へ向けた金の流れが解明されれば、それ自体が贈収賄罪や、ヤミ献金であれば政治資金規正法違反といった犯罪へとつながり得るものです。

本件を端緒と捉えることで、金の流れを既に相当程度解明していると推測される税務当局とも連携しつつ、上記のような広い視野で捜査を進めることができる組織、それは検察の特捜部以外にはないでしょう。

最近の特捜部の「ネズミを取らないネコ」状態では期待薄とは思いつつも、そういった今後の可能性に、私は注目しています。