防衛庁調達実施本部副本部長等の職にあった者が、退職後に私企業の非常勤顧問となり顧問料として金員の供与を受けたことについて、事後収賄罪が成立するとされた事例

最高裁第三小法廷決定(平成21年3月16日)ですが、判例時報2069号153頁以下に掲載されていました。
事後収賄罪というのは、刑法197条の3・3項で

公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。

と定められているものですが、判例時報のコメントでも紹介されているように、適用例が極めて少なく、上記のような経緯で、最高裁決定でも「顧問としての実態が全くなかったとはいえないとしても」という事実関係の下で、職務と供与された顧問料との対価性が認定されたことは、新たな規範定立がなされたわけではないとはいえ、貴重な先例と言えるのではないかと思います。決定が指摘する、職務上不正な行為が行われた後の間もない時期に、被告人の希望に応じ、異例な報酬付与の条件の下で被告人が非常勤の顧問として受け入れられた、といった経緯が対価性認定の決め手になったのでしょう。
収賄罪では、こういった対価性が問題になることが少なくなく、その意味でも先例としての価値がありそうです。