司法取引の導入で冤罪事件が増える?

http://getnews.jp/archives/670585

この内容からすると要するに、荒っぽく言えば、「あいつの犯罪について話したらしたら不起訴にしてやる」とか「求刑3年にしてやる」というものを法律にしようとしているということになります。少し考えればわかると思いますが、これは冤罪の温床につながる危険をはらんでいます。

共犯者の供述には、いわゆる「引っ張り込みの危険」と言われているような、他人を引きずり込んで自らの有利な方向へと結びつけようとする危険を常にはらんでいるものです。司法取引の場合、供述者にはかなり大きな利益(不起訴など)が与えられますから、そういった危険に対する警戒は、供述を評価するにあたり怠らないようにする必要があるでしょう。
ただ、そもそも供述の評価は、供述に至った動機だけで行えるものではなく、供述そのものの具体性や迫真性、他の証拠(他の供述も含め)により裏付けられているか等々、様々な観点で行われるものです。その意味では、司法取引により出てきた供述だからといって、そ例外の供述とことさら取り分けて考える必要もなく、供述経過も含め慎重に見る、という意味では従来の供述評価と特に変わりはないだろうと思います。
なお、上記の記事では、

弁護人という立場からも難しい場面が予測できます。先ほどのケースで被疑者が「トップの関与については実は知らない。でも、それを認めると自分は不起訴になるので、司法取引をしたい」と打ち明けてきた場合、弁護人としてその司法取引に合意してよいものか、非常に悩ましいものとなります。

とありますが、法制審議会で想定されている司法取引では虚偽供述罪の創設も考えられているようで、嘘をついて自らの罪責を軽くしたいという相談を受けたら弁護人としてはやめるようにアドバイスする必要があるでしょう。むしろ、供述すべきかどうか迷っている場合に、弁護人としてうまく寄り添って、供述するメリット、デメリット(供述することで今後の生活に不利益が生じるなど)をうまく整理して的確なアドバイスをすることが重要になってくるのではないかと思います。従来の、「争うことに価値がある」的な刑事弁護とは異なる、かなり高度で深みのある弁護活動が求められることになるでしょう。