http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/167688
最大の問題は無実の人が事件に巻き込まれる恐れが払拭(ふっしょく)できない点だ。米国の司法取引でも冤罪が露見し問題となっているケースがある。
刑事訴訟法改正案など関連法案では司法取引に弁護人の同意を必要としたほか、虚偽証言に罰則も設けた。だが、こうした対策だけで十分な歯止めとなるだろうか。
今回の改正案で同時に導入を目指す取り調べの録音・録画(可視化)の対象事件はごく限られる。このため、容疑者側が司法取引に合意するまでの過程の事後検証が難しいという指摘も出ている。
「他人」の犯罪についての供述は、共犯者についてよく指摘されますが、「引っ張り込みの危険」といって虚偽が語られ冤罪が生じやすいもので、上記の記事中の「米国の司法取引でも冤罪が露見し問題となっているケース」にもそういうものはあります。司法取引では、そういう引っ張り込みがあっても、引っ張りこんだほうは責任が軽減されたり免れたりするわけで、それだけに危険なものがあるでしょう。
そういった供述の信用性評価にあたっては、従来以上に「供述経過」の検証が強く求められることになるべきですが、上記の記事にもあるように、可視化が全面的でない上、特に悩ましいのは供述者が弁護人と対応を協議している部分は秘密交通権の保障もあり闇の中(供述経過の検討上は、という意味でですが)で、そこで、嘘をついても自分は逃げ切ろう的な話がされていれば信用性評価の上で検討できないということです(弁護人には守秘義務があり語らないし語れないでしょう)。そこは、弁護人の倫理的な対応も求められると思いますし、例えば、強く否認していたものが一転して認める、その経緯に不審がある、といったケースでは裁判所が問題意識を持って臨むことも強く求められるところです(弁護士だから常に適切にアドバイスしていると即断すべきではありません)。
新たな制度が導入されることで、従来は特に問題視されてこなかったような部分に、新たに光を当てて、より慎重かつ十分な供述の信用性評価を心がけることが必要になると思います。