女性襲った男が抵抗され死亡 正当防衛か

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131005-00000015-sph-soci

同署によると、同日午後7時半頃、女性は荒川鹿浜橋緑地の歩道をジョギングしていたところ、知らない男に突然、刃渡り10センチの果物ナイフを突き付けられ、キスをされたり、体を触られたりしたという。女性は「男がナイフを地面に置いたすきにナイフを奪って太ももを刺して、近くを通りかかった男性に助けを求めた」と説明している。刺し傷は1か所だけだったという。

正当防衛が成立するかどうかが問題になりますが、貞操に対する急迫不正の侵害に対し身を守るため相手に傷害を負わせる程度のことは、やむを得ない反撃として、正当防衛として許容されると考えるべきでしょう。「貞操」と「侵害者の傷害」は、均衡を失するものではないと思います。
ただ、傷害が生命を失わせるようなもの、ということになると、貞操との間で均衡を失するのではないかが問題にはなります。このような状況で正当防衛を考える上では、本件のような「死亡」という結果ではなく、反撃「手段」に重点を置いて見るべきと、実務上も考えられています(不正に対する正による反撃、という観点から)。身体の枢要部(首から足の付け根あたりまで)に対する攻撃は、生命に対する危険性が高いとされますが、太もも、というのは、一般的にはそこを刺して生命の危険が生じると考えられている場所ではなく(実際は、記事にもあるように、動脈があってそれが傷つけられることで死に至るということもあるのですが知られてはいません)、本件では、刺突行為も1回にとどまり執拗なものではなかった、ということですから、反撃手段として相当性を欠く、過剰である、とは言えないと思います。
従来の刑事実務上、積み重ねられてきた考え方に照らせば、正当防衛が成立する可能性がかなり高いと言えるでしょう。