「忠臣蔵」の決算書

「忠臣蔵」の決算書 (新潮新書)

「忠臣蔵」の決算書 (新潮新書)

大石内蔵助が記録していた「金銀請払帳」の存在は、私も以前から知ってはいたのですが、本書では、その内容をたどりながら、他の史料も参照しつつ、赤穂浪士の、刃傷事件から討ち入りまでの動きを、「金」の面から追っています。読み終えて、討ち入りが一大プロジェクトであったことや、それを支える資金があったからこそ成功したこと、日々出て行く資金を管理しながら脱落も相次ぐ浪士をまとめてこの一大プロジェクトを成功させた大石内蔵助の力量、苦労について、しみじみと感じ入りました。
行き届いているな、と特に感じたのは、大石内蔵助が、浪人生活が続き窮乏する浪士の生活のため、細々と資金援助をしていることで、こうした、下への配慮が行き届いているということは、現代のリーダーシップにも大きく通じるものがあるのではないかと思いました。当初は1000両近くあった資金も、次第に減り、討ち入り時点では大石内蔵助が自己資金を投入せざるを得ない状態にまでなっていたようですが、血気にはやる一部の浪士を抑えつつ、浅野家再興にも望みをかけて運動し、並行して討ち入りも慎重に検討していた大石内蔵助の、日々、減って行く資金を見ていた気持ち(ため息をつくこともあったでしょう)を想像して、大変なプレッシャーだっただろう、骨身を擦り減らす日々だっただろうと、強く察せられるものがあるとともに、忠臣蔵赤穂浪士の存在が、より身近に感じられるように思われました。
たかが金、されど金、ということでしょうね。