少女像侮辱日本人の身柄引き渡し請求検討=韓国検察

http://japanese.joins.com/article/566/157566.html?servcode=A00§code=A10

2002年に締結された韓日間の犯罪人引き渡し条約によると、両国の法律によって死刑、終身刑、または1年以上の自由刑で処罰される犯罪は引き渡し請求の対象となり、両国が特定犯罪行為を同じ罪として規定しているかどうかは問題にならない。

検察は男性を韓国で司法処理することについてさまざまな方向で法的検討を進めてきた。
一方、男性を告訴した慰安婦被害者らの代理人を務めるパク・ソンア弁護士は、韓国内で男性を処罰するのが難しい場合に備え、日本の司法当局に直接告訴、告発することも計画している。

日韓犯罪人引渡条約を見てみたのですが、

第2条 引渡犯罪
1 この条約の適用上、両締約国の法令における犯罪であって、死刑又は無期若しくは長期一年以上の拘禁刑に処することとされているものを引渡犯罪とする。
2 引渡しを求められている者が引渡犯罪について請求国の裁判所により刑の言渡しを受けている場合には、その者が死刑の言渡しを受けているとき又は服すべき残りの刑が少なくとも四箇月あるときに限り、引渡しを行う。
3 この条の規定の適用において、いずれかの犯罪が両締約国の法令における犯罪であるかどうかを決定するに当たっては、次の(a)及び(b)に定めるところによる。
(a)当該いずれかの犯罪を構成する行為が、両締約国の法令において同一の区分の犯罪とされていること又は同一の罪名を付されていることを要しない。
(b)引渡しを求められている者が犯したとされる行為の全体を考慮するものとし、両締約国の法令上同一の構成要件により犯罪とされることを要しない。
(以下略)

とあり、記事にあるように、「両国が特定犯罪行為を同じ罪として規定している」ことは必要ではありませんが(第2条3項)、双方の国で犯罪として処罰の対象になっていることは必要で、日本の刑罰法令で、上記のような行為が処罰されるかどうかが問題になります。日本の名誉毀損罪は、特定人の社会的評価を低下させる行為が処罰対象になっているので、従軍慰安婦問題の支援者、といった不特定の人々に対する行為は処罰対象にはならないでしょう。他の刑罰法令に触れるかどうか、考えてみましたが、記事で紹介されている行為を前提とする限り、思い当たりません。
仮に、日本で何らかの犯罪に該当する場合でも、条約では、

第6条 自国民の引渡し
1 被請求国は、この条約に基づいて自国民を引き渡す義務を負うものではない。もっとも、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる。
2 被請求国は、引渡しを求められている者が自国民であることのみを理由として引渡しを拒んだ場合であって、請求国の求めのあるときは、被請求国の法令の範囲内において、訴追のためその当局に事件を付託する。

とされ、日本は、自国民を引き渡さないことが可能で、自国民であることのみを理由に引渡しを拒んだ場合、請求国の求めがあれば、法令の範囲内で訴追のため事件を当局に付託できます。記事で「韓国内で男性を処罰するのが難しい場合に備え、日本の司法当局に直接告訴、告発することも計画している。」とあるのは、そのような場合を想定しているのでしょう。
日本側としては、条約や日本国の刑罰法令に則り、厳正に、かつ粛々と処理するしかありませんが、現実的には、双罰性の要件を満たさない、として引渡し不可となる可能性が高く、そうなれば、日韓関係がますます悪化することは必至で、今後、大きく問題化するのではないかと危惧されます。