夜明けの街で

夜明けの街で (角川文庫)

夜明けの街で (角川文庫)

昨年秋に、映画化されて公開されていましたが、その当時に、興味を感じて少し読んでいたものの残りを読みました。映画は、結局、観ずに終わりましたが、原作はなかなかおもしろく読めました。
不倫相手の女性に、殺人事件の疑いがかかっていて・・・というストーリーでその疑いが果たして、というところや、主人公と不倫相手の様々な駆け引き、心理描写も、丹念に書き込まれていて、興味深いものがありました。読みながら思い出したのは、かなり前のことになりますが、仕事の関係で私の身近にいた人が、殺人事件の被害者と最後に接触していた、ということで、警察の捜査対象になっている、ということがわかったことがあって(詳しく言うと特定されるので言いませんが)、そのことを知った後、その人を見ると、もしかしたらこの人が真犯人?という疑惑が頭をもたげて、穏やかならざる気持ちになったことが思い出されました。その後、その人が逮捕された、という話を聞きませんが、今でも、真相は果たしてどうであったのか、ということは感じます。最近、黒だ灰色だと、無罪判決を巡って外野がうるさく騒いでいる事件がありましたが、事件、特に刑事事件というものは、黒かと思えば白であったり、白になりきれずに灰色のままであったりと、様々な色を呈しながら推移するもので、起訴されなかったもの、起訴されても有罪にならなかったものを、安易に、あれは本当は黒かった、などと語ることはできない、ということを感じます。この作品を最後まで読んだ人にも、これと似た感想を持つ人がいるかもしれません。