令状なくエックス線検査は違法 大阪、薬物事件の宅配便

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/125351

ボ2ネタ経由で知りましたが、興味深い判例ですね。

一、二審判決によると、被告は2004年、覚せい剤などの薬物計約3・7キロを暴力団から宅配便で譲り受けるなどした。
被告が実質経営する会社に覚せい剤が宅配便で届いている疑いが浮上し、府警は業者の承諾を得て5回検査。固形物が詰まった長方形の袋を見つけ、その後、令状を得て、覚せい剤を押収した。

従来の強制捜査による定義に照らせば、対象者の意思を制圧するといった要素はなく、任意捜査として許容される、と解する余地もありそうで、だからこそ高裁までの判断では任意捜査として是認したものと思われますが、実質的に考えると、この種の捜査が任意でできれば、最高裁が指摘するように、プライバシー権が容易に侵害されかねず、強制捜査をして考えるべきでしょう。強制捜査について、最高裁が何らかの新たな定義をしているのか、興味を感じます。
違法収集証拠として排除する、ということまではしていませんが、排除しないとした根拠も、今後の参考になりそうです。

追記(平成23年3月9日):

判例時報2099号160頁以下に掲載されていました(最高裁第三小法廷平成21年9月28日決定)。
最高裁は、本件で問題となった行為について、プライバシー等を大きく侵害するもので強制処分としての検証に該当し、無令状で行ったことは違法であるとしつつも、嫌疑が高まり捜査の必要性があったことや、捜査官に令状主義潜脱の意図がなかったことなどの事情から、「重大な違法」があるとまでは言えず、証拠排除の必要はないと結論付けています。強制処分の定義について、特に新たなものはありませんが、本件では、個人の意思を制圧する側面よりも、むしろ、そのプライバシー等の侵害性が端的に評価されたものと言えるように、決定を読んで感じました。