検察、顧客情報入手方法リスト化

検察、顧客情報入手方法リスト化(共同通信) - Yahoo!ニュース

検察当局が、顧客情報を入手できる企業など計約290団体について、情報の種類や保有先、取得方法を記したリストを作り、内部で共有していることが3日、分かった。共同通信がリストを入手した。情報の大半は裁判所などのチェックが入らない「捜査関係事項照会」などで取得できると明記。

 刑事訴訟法では、197条2項で

捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

と定められ、これに基づいて、「捜査関係事項照会書」が、捜査機関から照会先へ送られ、得た回答が捜査資料としてかなり利用されています。

この法的に性質については、照会先が観念的な義務を負うというのが 通説、実務で、ただ、応じなくても何ら制裁はなく、任意捜査と考えられています。

捜査機関としては、この手法で回答が得られる見込みがあればこれにより、その見込みがなかったり回答が得られなければ、令状に基づく強制捜査を検討することになります。

個人情報保護法上も、本人の同意なく情報開示ができる場合として「法令に基づく場合」が挙げられ、これには、上記の捜査照会が含まれると解されています。ただ、照会に応じて回答することが、より大きな利益(プライバシー権等)を侵害する場合、回答することは違法であるとも考えられていて、回答することが権利を侵害された者に対する不法行為になる場合もある、というのが、現行の確立した考え方でしょう。

何が、そのような違法行為になるかは、あまり厳密に考えられていない面があり、安易な回答が横行している可能性はかなりあると、私の経験上も感じるものがあります。

ただ、そういう実態を「令状主義の潜脱」いった切り口で見ることには、私自身は違和感があります。刑事訴訟法上、任意捜査が原則とされている中で、まずは捜査照会で情報入手を図るという捜査機関の手法にはそれなりに正当性があるでしょう。迅速性を要する捜査の中で、いちいち、これは令状によるべきかと先回りして考えさせ令状取得を課すというのは、かなり無理があります。

むしろ、照会を受ける側が、上記のような法的利益状況にきちんと思いを致し、回答すべきでないものには回答せず、令状によることを求める必要があると思います。回答すべきでないものに回答することで、後日、その責任を追及されることは大いにあり得ることです。

安易に捜査照会、回答が多用されてきた実務に、一石を投じる記事と言えるでしょう。