「守秘義務違反の恐れ」=裁判員会見の発言で見解−さいたま地裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090812-00000172-jij-soci

田村真裁判長は判決言い渡し後の法廷で、被告に対し「30代半ばなので刑期を終えてもやり直しがきく。一日も早く立派に立ち直るよう期待する」と説諭した。
記者会見では、この説諭について「裁判員の気持ちを代弁したと感じたか」との質問が出た。ある裁判員経験者は「代弁していただいたと思う」と回答。その後、別の裁判員経験者が回答できるかを、会見に立ち会った地裁の加藤和広総務課長に確認。総務課長は首を横に振って否定するしぐさをし、経験者は回答を控えた。
加藤課長は会見終了後、「守秘義務に触れる恐れのある回答を引き出す質問が出た。答えは裁判の結果に対する裁判員の意見になりかねない」と取材に対し話した。 

守秘義務違反にあたったかどうかが話題になっていますが、そもそも、裁判所職員が会見に立ち会い、答えて良いかどうかについて許可、不許可を出すということが、日本国憲法が禁止する「検閲」にあたるのではないかも問題にされるべきでしょうね。

第21条
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

憲法上、検閲は絶対的に禁止されていて、その定義につき、最高裁は、かつて著名な北方ジャーナル事件で、「行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」と、かなり狭く限定しました。
主体が「行政権」とされていますが、上記の記事にあるような裁判所職員の行為は、司法行政の一環として行われているはずですから、最高裁が言う「検閲」に該当する可能性はあります。
また、仮に、絶対的に禁止される検閲に該当しないとしても、厚く保護されるべき表現の自由については、事前抑制の禁止が原則であり、判決宣告後で、「元」裁判員にしか過ぎない人々の会見に、公権力である裁判所職員が立ち会い、発言につき、許可、不許可を出すことは、仮に上記の「検閲」には該当しないとしても、表現の事前抑制として、違法性が強く疑われる行為と言えるでしょう。
守秘義務は、個々の裁判員、元裁判員が自ら意識して注意すべき問題であり、裁判所職員が会見に立ち会い口出しするような行為は、表現の自由の侵害である可能性が高いと思います。
表現の自由を守るべき立場のマスコミが、こういった越権行為を座視し受け入れているのも間抜けな話です。