ヤフオクでチケット販売 即逮捕という恐ろしい現実

http://www.j-cast.com/2009/02/21036362.html

ボ2ネタ経由で知りました。

(2)の場合、インターネットが「公共の場」にあたるかが1つの争点になる。条例が策定された当時は、野球場周辺などでダフ屋行為が多かった。「条例が時代にあっていない」とし、ネットオークションの扱いが今後の課題となりそうだ。
ただ、警察の摘発を見ると、ネットオークションは「公共の場」と判断しているのは確かだ。となると、出品すればつかまる可能性はあるのだ。

この記事は正確ではないですね。ちょっとコメントしておきます。
東京都迷惑防止条例では、

(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)
第2条
1 何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。
2 何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。

とあって、インターネットオークションでの売却行為が、2項に該当するかということが問題になっていますが、「現行の」実務においては、インターネットオークションが「公共の場所」であるという解釈はとられていません。そもそも、迷惑防止条例上の「公共の場所」概念は、リアルな場所が想定されていて、インターネットオークションのようなバーチャルな「場所」を含めるのは無理があります。
現状で、いわゆるネットダフ屋について、上記の記事のような検挙の対象になっているのは、1項規定の「転売目的による公共の場所等における購入行為」の時点が犯罪行為として捉えられていて、その後のインターネットオークションにおける転売行為自体は、入手時の「転売目的」を裏付ける事情になってはいますが、それ自体は犯罪行為と捉えられていません。
上記の記事で、

08年7月10〜12日、渋谷区とさいたま市コンビニエンスストア計5店で転売する目的で引換券16枚を計1万6000円で購入した疑い。また、08年6〜9月に引換券215枚をインターネットオークションで転売し、約21万円の利益を得たとみられる。

とある事件に即して言うと、「渋谷区とさいたま市コンビニエンスストア計5店で転売する目的で引換券16枚を計1万6000円で購入した」行為が1項該当で、その後の「引換券215枚をインターネットオークションで転売し、約21万円の利益を得た」行為は、2項該当ではなく、あくまで1項該当行為の「犯罪後の事情」ということになります。購入行為が、例えば、友人、知人から個別に譲り受けたものであるとか、インターネットオークションでの入手といったものであれば、その後、入手したチケットをインターネットオークションで売却しても、犯罪にはなりません。
ただ、ここが警察の巧妙なところですが、記者発表をする際、その点を曖昧にして、「インターネットオークションで転売した」という行為も、行為の中身として一緒に含めて発表する上(記者程度の能力ではそういったところに思いが至らずそのまま記事になる)、上記の記事にもあるように、インターネットオークションが公共の場所かどうかといった問い合わせを受けても答えないので、あたかも、インターネットオークションが公共の場所であるという解釈が確立しているかのような印象を与え、上記のような不正確な記事も出てくる側面があります。弁護士でも、こういった事情は知らない人がほとんどなので、聞いても正確な答えがもらえない場合がほとんどです。
警察としては、以前から、ネットダフ屋に関する苦情(興業運営者、チケットが買えなかった利用者などによる)から多数寄せられていて、インターネットオークション自体を「公共の場所」として認定し立件したいと熱望していますが、解釈としてさすがに無理なので、こういった対応になっている面があります。
なお、ここで述べているのは、あくまで「現行の」実務であり、今後、公共の場所に関する解釈が変わったり、迷惑防止条例が改正されたりする可能性がありますから、その点、十分な注意が必要です。
また、ここで述べているのは、当然のことですが、私の経験、知識に基づく個人的見解ですから、その点も注意してください。