札幌地裁、追加立証求める 異例の審理再開 札幌姉妹虐待死

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/54280.html

検察側は長女に治療を受けさせなかった不作為殺人と主張。弁護側は「脳損傷で、病院へ搬送しても助からなかった」などと主張していた。再開後の公判で嶋原裁判長は「(救命可能性に関連する脳損傷について)真実究明には今ある証拠だけでなく、医学的説明が必要」と述べた。
閉廷後、弁護側は「立証が不十分な検察側に助け舟を出した」と批判した。一方、札幌地検は「立証は十分と考えている」と説明。明治大学法学部の上野正雄准教授(刑事法)は「二審で事実認定が覆らないようにしたいためだろうが、積極的に有罪にもっていくような訴訟指揮は問題だ」と指摘している。

「積極的に有罪にもっていくような訴訟指揮」かどうかは、具体的な証拠関係がわからないので何とも言えませんが、検察官が「立証は十分と考えている」と言っているのを押し切って、敢えて裁判所が補充で証拠調べをする、と言っているわけですから、裁判所として、事案の真相を解明する上で不可欠、と考えたのだろう、とは思いますね。
私の場合、弁護士になって間がない頃、仕事があまりなく、また、刑事事件の勘を鈍らせないため、国選の控訴事件を比較的やっていた時期がありますが、「事後審」担当の弁護士の目から見ると、特に被告人、弁護人が、なぜ1審で、この点を立証しておかなかったのか、と思うことがよくありました。その点を立証すれば結論が確実に変わった、とは言えないまでも、その可能性や、少なくとも量刑面で影響はあったのではないか、と思われるケースもありました。
刑事事件の場合、控訴審は「事後審」であり、新たな立証もかなり制約されますから、裁判所に言われるまでもなく、必要な立証は尽くしておく必要性が大きい、ということを忘れるべきではないと思います。