http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008041002002522.html
女性は二〇〇六年十月にスーツケースに隠した覚せい剤をマレーシアから密輸しようとしたとして逮捕され、〇七年八月に千葉地裁で無罪判決を受けた。
釈放後、在留資格が切れていたためスイスへ帰国する手続きをしていたところ、千葉地裁が職権で拘置を決定。東京高裁はいったんは拘置決定を取り消したが、その後、再拘置を決定。弁護側は特別抗告したものの最高裁が棄却した。拘置期間は約一年半に及んだ。
一審判決は「故意に覚せい剤を密輸しようとしたと認めるには疑いが残る」と判断。高裁も「覚せい剤がスーツケースに隠されていたのを知らなかったとの弁解は、虚偽といえない」と判断し、無罪判決を支持した。
また、高裁判決は▽税関職員の証言が一審と二審で変遷しており信用できない▽空のスーツケースを用いた再現実験は証明力に乏しい−などと、検察側立証を厳しく非難した。
無罪になった外国人被告人の再勾留が大きく問題になった事件ですが、そもそも、この種の事件で、控訴審で、1審で出た証拠以上の、新たに被告人の有罪を裏付ける証拠が出る可能性は極めて低く、再勾留するかどうかを高裁が判断した際に検討した一件記録がすべてと言っても過言ではないと思います。その意味では、一件記録を見れば、上記のような結論に至ることができたものと言え、それにもかかわらず、なぜ無駄な再勾留までして、ここまで引っ張ったのかと批判されてもやむをえないでしょう。
そういった、自らの一種のチョンボは棚に上げて、「気の毒」などと他人事のようにうそぶいているところが、いかにも、私は判断するだけ、悪いのは裁判所以外、という、裁判所の無責任な感覚を示しているように思います。