「吉田松陰の生涯:猪突猛進の三〇年」

 

私自身の吉田松陰に対するイメージは、大部分が

によって形成されていると言っても過言ではないのですが、あくまで小説ですから、史実に基づく吉田松陰の真の姿について書かれたものを読んでみたいと以前から思っていました。たまたま本書の存在を知り、読んでみました。

著者は、歴史学者というよりも政治思想史の専門家のようであり、吉田松陰の思想、考え方を史料に基づいて克明に追っていきます。やや難解なところもありましたが、吉田松陰が、激動の時代の中で、懸命に読んで思索しつつも自らの思想を大成できないまま憂国の志から過激な行動へと走っていった姿がよくわかり、参考になるものがありました。

では、それまで形成されてきた私の吉田松陰に対するイメージが変わったかというと、特に変化はなく、安全圏に身を置いて評論家的に生きるのではなく、あくまで行動に出て幕末の日本を変革しようとした、その生き方に対する畏敬の念はさらに高まりました。