吉田松陰――久坂玄瑞が祭り上げた「英雄」 (朝日新書)

吉田松陰――久坂玄瑞が祭り上げた「英雄」 (朝日新書)

吉田松陰――久坂玄瑞が祭り上げた「英雄」 (朝日新書)

私の場合、現在のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」で放映している時代のイメージが、司馬遼太郎「世に棲む日日」で固定してしまっている面があり、せっかく、つまらないのを我慢して花燃ゆを見ているし、この機会に、ある程度信頼できるものを何冊か読んでおきたいと考えています。この本も、そういう思いから買って読んでみました。
副題が刺激的ですが(そこに関心を持って買った面もありますが)、著者は、吉田松陰という人物に対してクールな見方を持ちつつも(純真さは評価できるが功績はそれほどでもない、死後になって久坂らから祭り上げられ明治後の皇国史観や軍国化の中でさらに神格化された、という感じでしょうか)、本書では、安政の大獄前から禁門の変で久坂らが亡くなるまでの流れをコンパクトに概観していて、世に棲む日日では出てこない史実にも触れられてもいて、この時代に対する見方にちょっと厚みが出たかな、というのが読後感でした。
軽くこの時代について読んでみたいという人にはお勧めの一冊になると思います。