<イスラム国>警視庁、北大生ら事情聴取 私戦予備の疑い

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141006-00000092-mai-soci

公安部によると、学生はイラクやシリアで勢力を拡大するイスラム国に戦闘員として加わるため、7日に日本を出国し、シリアに渡航する計画を立てていた。関係者から情報提供があり、公安部が内偵捜査を進めていた。
私戦予備および陰謀容疑は刑法93条で規定。外国に対し私的に戦闘行為をする目的で準備や計画をした場合、3カ月以上5年以下の禁錮刑にすると定めている。

私戦予備・陰謀罪は、私も、司法試験の択一試験前に勉強したことがある程度で、司法修習生から実務家になり現在に至る過程で、これが問題になる場面を見聞きしたことはありません。それくらい、適用が稀(皆無、と言っても過言ではないでしょう)な犯罪構成要件です。
手元にある注釈刑法(有斐閣)の、私戦予備・陰謀罪についての解説を読んでみると、「私的に」行う戦闘行為は、私的な組織により国家意思と無関係に行われることをいう、国家意思に基づく公的な武力行使は除外される、とされています。イスラム国を国家と見て、国家意思に基づく戦闘行為に加わる目的であった、ということになれば、この犯罪には該当しない(目的が欠ける)ということになりますが、国かどうかは、おそらく、国際法上の国家に関する定義に依る、というのが立法者の考え方でしょう。イスラム国について、国家かどうかという議論が日本の刑事法廷で展開されるのを見てみたいという気がしますが、警視庁としては、これで逮捕、立件まで狙っているのではなく、関係箇所に対する捜索、押収を行い必要な取調べを行って、情報を収集するとともにマスコミを通じて大きめに報道させて、日本にもこういうことを実際にやろうとしている人々がいる、ということを広く社会に知らしめ抑制を図りたいという意図なのだろうと私は推測しています。
昔から、カルト宗教にはまる若者、というのは跡を絶たないものですが、そういう流れの中で本件を位置づけるのがわかりやすい気がします。