イスラーム国の衝撃

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

今年の1月くらいに出た後、割とすぐに買って、ぽつぽつと読んでいたのを、最近、やっと読み終えました。新書ですが中味が濃くて参考になりました。
ISIS(イスラム国)については、その残虐性、非人道性が注目されがちで、それは確かに大きな問題として注目されるのは当然なのですが、この本を読んでいると、イスラム教の教えを彼らなりに解釈して人々を引きつけるようなものに仕立て上げていることや、中東、北アフリカ地域での従来の歴史や混乱、既存の国家体制の弱体化や反米機運の高まりなどの様々な背景が、今の状態を生み出していることがよくわかります。彼らを戦闘でせん滅しても、新たな同様の勢力が出てくる可能性が高いという著者の指摘には重みがありますし、国際的な協力の下で今後の改善を図るとしても、かつてのイラク戦争のような、戦闘では勝利したが深刻な混乱を招いてしまった(それが今のISISにもつながっている)という歴史の教訓に大きく学んだものでなければならないでしょう。
著者の見方、意見にはいろいろと異論はあると思いますが(今後も建設的な議論の必要があるでしょう)、現状を冷静に見つつ今後への展望を持つ上で、参考になる一冊であると感じました。