最高検公判部長:電車遅らせた問題で更迭 動機説明せず

http://mainichi.jp/select/news/20121017k0000m040068000c.html

最高検によると、岩橋前部長は9月28日午後11時25分ごろ、横浜市青葉区東急田園都市線あざみ野駅で、乗っていた電車のドアが閉まる際に自分のかばんを何度も挟み、発車を約4分遅らせた。運転士が前部長を見つけ、警察に引き渡した。庁舎内で酒を飲み、帰宅途中だったという。
調査した最高検は前部長の故意を認定する一方、動機については「差し控えたい」と説明しなかった。

報道されている行為態様や結果に照らすと、刑法上の業務妨害罪や、軽犯罪法違反(1条31号で「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」が処罰対象になっています)が成立する可能性が高いと考えられますが、何ら立件せず、ということなのでしょうか。業務妨害罪までは認定しにくくても、軽犯罪法違反(より軽微な事案に対して適正に取締りを行うために設けられた処罰規定です)を適用してけじめをつける、というのが、法治国家における、最高検公判部長という高位高官にありながらこのような愚かな迷惑行為に及んだ者へのけじめのついた措置ではないかと思います。
下のエントリーの、おそらくは冤罪により泣きながら自白した(させられた)大学生(事件により退学処分になった、とのことです)と比べ、単なる厳重注意(国家公務員法上の懲戒処分ですらなく)、更迭、本人は辞職の意向なし(他の報道によると)で終わり、というのは、あまりにも甘すぎる措置と感じるのは、おそらく私だけではないでしょう。他人に厳しく身内に甘く、という検察庁では国民の信頼も納得も得られないと思います。
このニュースを聞いた子供から大人に対して、このおじさんは最高検公判部長という偉いおじさんなのに他人に迷惑をかけて叱られ席替えされただけで終わりなの、僕も(私も)悪いことをしても叱られて席替えされるだけで終わりなら悪いことやってみようかな、と聞かれたら、大人は何と答えればよいのでしょうか。こうして、法治国家は秩序を失い人心も乱れて崩壊して行くのではないかと思います。
国家刑罰権の適正な行使という重要な職務に携わる、その組織の、最高検公判部長という要職にあった者の、この無様な姿、それに対するいい加減な措置は、現在の日本におけるモラルハザードや国としてのあるべき姿の自壊といったことを象徴するものと言えそうです。