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デジタル・フォレンジックが専門の企業「ネットエージェント」の杉浦隆幸社長は、業界内でも上位のセキュリティ技術やIT技術を持つ技術者であれば、検察が「片山さんが犯人と考えることが合理的」と主張する証拠の数々は、外部からの遠隔操作によって比較的簡単に埋め込むことができると指摘する。
今回の真犯人は一定レベルのデジタルフォレンジックの知識を持っていると断言するのだ。一連の遠隔操作ウイルス事件で真犯人が2013年1月にメディア関係者などに対して送り付けてきた「延長戦メール」の中にあったクイズの2問目に、デジタル・フォレンジックの代表的な技術であるデータ復元の過程が含まれていたからだ。杉浦氏はこれをもって、犯人に一定のデジタル・フォレンジック、もしくはそれを無効化させるアンチ・フォレンジックの知識や経験があるとみてまちがいないだろうと言う。
状況証拠による犯人性の推認、ということが行われる際、上記のような事情は、被告人がそういった能力、属性を持ち合わせていない、少なくともその点に疑いがある、ということであれば、犯人性を否定する方向に働く「負の状況証拠」として慎重に検討される必要があるところでしょう。
昔から、取調官が、犯人という心証が来る、来ない、といったことを述べることがありますが、これは、単なる印象、感想というより、対象である被疑者の持つもの全般を鳥瞰して、犯人性が推認されるものがあるかどうかを問題にしているのだろうと思います。こういった心証は、それだけで有罪、無罪が決まるようなものではありませんが、結構、重要性があって、昔の検事が書いた本で、決裁の際に否認事件の処分が問題になり、決裁官が、被疑者の取調状況を物陰か何かから見聞してみて、これは問題があるということで不起訴にした、といった話を読んだことがあります。
本件では、被疑者、弁護人側が取調べの可視化を要求し、捜査機関側がそれに応じなかったため、取調べが不十分にしか行われていないと報じられていますが、取調べを適正、慎重に行いながら、心証を取り、細かい点を含め被疑者の言い分に耳を傾ける、ということができていないのは、今後の立証上、じわじわと検察官側にも響いてきそうな予感がします。
杉浦氏が指摘するような、「一定のデジタル・フォレンジック、もしくはそれを無効化させるアンチ・フォレンジックの知識や経験がある」という犯人像は、被告人にあてはまるのでしょうか?