ETV 特集「永山則夫 100時間の告白」〜封印された精神鑑定の真実〜

http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/1014.html

100時間を超える永山の告白は、想像を絶する貧しさだけでなく、“家族”の在りようについて訴えかけている。それは、親子の関係、虐待の連鎖など、時代が変わり、物質的な豊かさに恵まれるようになった現代でもなお、人々が抱え続けている問題だった。

永山則夫 封印された鑑定記録
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20130510#1368167562

でコメントしたように、先に本を読み、その後、上記の番組も観ることができました。先に本で読んでいたので、内容は既知のものでしたが、映像で、関係者の肉声や表情などを目の当たりにすると、改めて、重みや深刻さなどがひしひしと感じられました。鑑定人を務めた石川医師が、裁判所や検察官だけでなく永山元死刑囚本人にも鑑定結果を否定され、将来を嘱望された犯罪精神医学の道を断念して臨床医に転じた後、長い年月が経過した末に、永山元死刑囚が獄中で手製のビニールカバーをつけ何度も読み込んだ形跡のある鑑定書を見せられて、目を潤ませながら見入っているシーンが特に印象的でした。この鑑定が永山元死刑囚を死刑台から救うことはできず、また、それへのネガティブな反応が石川医師の進路を大きく転換することになって、世間的な言い方では、役に立たなかった、徒労に終わった、ということにならざるを得ないとしても、鑑定としてここまで徹底的に被告人の内面に深く切り込み、起きた犯罪というものを、表面的、平面的にではなく、立体的に、起きた原因にまで限りなく迫ったということは、日本の刑事裁判史上、特筆すべきものとして大きく刻まれるべきでしょう。番組では、古い、今となってはなかなか見ることが難しい、かつての街や人の映像を丹念に拾い集めていて、ドキュメンタリーとして高い完成度に達しているということも感じました。
永山元死刑囚のような不幸な人生ができるだけ減り、ダークサイドへと落ちて行かないような、人に優しい、弱者に温かい手が差し伸べられるような社会が築かれる必要性を改めて感じました。