スマホ情報流出で逮捕の5人を釈放、東京地検

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121121/crm12112101060000-n1.htm

社長の弁護側は、アプリをダウンロードする際の注意事項に個人情報などの読み取りについても記載があり、流出は利用者の自己責任だとして無罪を主張している。地検は意に反した流出と言えるのか慎重に捜査しているもようだ。
5人は3月、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」向けのアプリ配布サイトに、個人情報を勝手に外部送信させるアプリを、動画再生ソフトと偽って公開。4月に都内の女性にダウンロードさせた疑いがあり、警視庁が10月に逮捕していた。

昨年、例のカレログの件が話題になっていた当時、

スマホ用追跡アプリが騒動に 勝手に行動を監視される危険も
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20110907#1315332424

で、法務省が公表しているところに沿って、不正指令電磁的記録とは何かについて検討してみたことがあります。
法務省が指摘しているように、

核となるのは,そのプログラムが使用者の「意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」か否かである。

ということでしょう。上記の記事によると、ダウンロードの際に同意を求める画面が出ていた、という事情があるようですが、その点は、「意図に沿う」「意図に反する」ということを考える上で、意図に沿っていたのではないか、反していたとはいえないのではないか、という方向に働く要素でありつつも、アプリが、全体として「意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」ように作りこまれていて、同意画面も、利用者が錯誤、誤認に陥った状態で、真意に基づく同意が困難な状況で出される構造になっていて、アプリ作成、提供者側も、そうした事情を認識、認容しながら行為に及んでいる、といったことであれば、同意画面があって同意しているから不正指令電磁的記録ではない、とは言えず、それに該当する、犯罪が成立する、という認定は十分あり得ると思います。上記の記事にある、「動画再生ソフト」が、どういうソフトであったか、仔細はよくわかりませんが、動画再生ソフトを利用する上で、社会通念上、必要とは考えられない過剰な情報を吸い出す仕組みにしていて、その点について「過剰性」を説明しないまま利用者の錯誤、誤認に基づき同意を取り付けていた、といった事情があれば、不正指令電磁的記録に該当するという認定はあり得るでしょう。
そうした、法的評価についての微妙な問題もあるため、東京地検は、慎重を期し性急に起訴せず処分保留としたものと、報道を踏まえると推測され、そういった慎重な姿勢は評価できると思いますし、この種のアプリは今後も出現する可能性が高く、起訴するにしてもしないにしても、十分検討を加えておく必要があるでしょう。