女性器アーティスト逮捕に抗議の声

http://www.afpbb.com/articles/-/3020722

3Dプリンターで自らの女性器を造形できるデータを頒布したとして、わいせつ電磁的記録頒布の容疑で東京都在住のアーティストが逮捕されたことについて、支持者たちの間では表現の自由に対する攻撃だとの抗議の声が上がっている。

自らの女性器をかたどったカヤック3Dプリンターで製作する費用に充てるため、インターネット上で不特定多数から資金を募るクラウドファンディングの手法で約100万円を集め、寄付の見返りに問題の3Dプリンター用データを提供していた。

行為の外形上は、わいせつ電磁的記録頒布罪に該当し得ると思いますが、問題は「わいせつ性」そのものでしょうね。
この点について、確立した判例によれば、わいせつとは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」とする一方、芸術性を有する表現行為については、様々な事件で激しくわいせつ性が争われてきた歴史があり、例えば、悪徳の栄え事件最高裁判決(最大判昭和44年10月16日)では、文書に関する判断ですが(表現、という意味では本質的には変わらないでしょう)、

文書がもつ芸術性・思想性が、文書の内容である性的描写による性的刺激を減少・緩和させて、刑法が処罰の対象とする程度以下に猥褻性を解消させる場合があることは考えられる

という判断を示していて、本件のように、女性器を撮影した画像、そのデータ、といったものではなく、あくまでデータを使用して3Dプリンターで造形する、といった形態(画像に比べ視認されることでのわいせつ性はそもそも相当低減されるでしょう)の場合、上記のような判例にも照らしつつ、そのわいせつ性や行為者の意図(わいせつ性に関する故意)が、相当慎重に検討される必要があると思います。様々な、より悪質でわいせつ性が高いケースが多数ある中、このようなケースを敢えて立件し、それも逮捕までする必要があったのか、素朴に疑問を感じるものがあります。準抗告審で勾留決定が取り消され釈放されたところに、裁判所の、この事件に対する疑問を感じるのは、おそらく私だけではないでしょう。
この種のケースの、何を立件し、何を立件しないかを考える上でも、参考になると言えると思うとともに、今後の捜査や処分が注目されます。