組織内弁護士について(私見)

昨日午後、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20111019#1319015361

で紹介した、東海大学法科大学院シンポジウム「企業が望む弁護士像」が開催され、私も、一聴衆として聴いてきました。組織内弁護士だけでなく、経営コンサルタント会社代表取締役や法務部所属の実務家も講師として話をされていて、私自身にとっても、かなり参考になる内容でした。100名近くの参加者が集まる盛況で、これから司法修習に入るという人も複数いました。参加者のそれぞれにとって、参考になる内容であったと思います。
私も、平成12年から平成19年まで、ヤフー株式会社で、当初は常勤、途中から非常勤で企業内弁護士をやっていたので、経験者の端くれにはなります。私の担当業務は、一般にコンプライアンスと言われている分野でしたが、社内のコンプライアンス(それも含んではいましたが)よりも、むしろ、運営するサービスにおける様々な利用者による違法・不当行為対応、という、特殊なコンプライアンス業務(米国のIT企業では「abuse」と言われている分野ですが)で、あまり一般化した話を、自らの経験からはしにくい面があります。
ただ、経験者として感じるのは、弁護士が組織内に入って、それなりに影響力を行使できるような立場に身を置くためには、実務法曹(訴訟実務等の従来からあるような実務を経験)としてのある程度の経験をした上でないと、特に、何かを止める、やめさせるといった場合のブレーキ役(これがなかなか重要な役割なのですが)にはなりにくいだろう、ということです。物事が、いけいけ、どんどんという状態で調子良く進んでいる時は、組織内弁護士の出番はあまり(と言うかほとんど)ないものですが、旗色が悪くなる、まずい状態になる、といった時に、出番が出てくるもので、そういった時に必要なスキルは、上記のような実務経験がないと、なかなか身につかないような気はします。
とは言え、今後は、司法修習を終えてすぐに組織内弁護士になる、という人が増えてくるでしょう。期待される役割は、個々の組織により様々であると思いますが、期待される大きな役割の一つは、まずい事態にならないため、また、なってしまった場合はマイナスを最小限に食い止めるためのもの、ということに、やはりなると思います。そういう役割が果たせる人材になるためには、日頃から視野を広く持ち物事を見るようにしつつ、例えば、できるだけ社外の弁護士と協同して事に当たり物の見方やスキル、ノウハウを吸収するとか、可能であれば顧問先の法律事務所へ出向させてもらい外部の弁護士が日常的に手掛けるような業務を学ぶなど、組織内に身を置きつつの工夫も必要ではないかと思います。
組織内弁護士は、日本では、従来は数が少なく、モデルが確立されていない面がありますが、それだけに、現在の人々が、新たな歴史を作り上げて行くことが必要で、能動的、積極的に自らのキャリアを切り開き築き上げるという気概が求められているのではないかと、私は考えています。