難事件における在宅取調べ

先日、

逮捕前に事実上の拘束、「帰宅させた」とウソ報告…大阪府警
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20091020#1256026759

につき、コメント欄で、

事故の虞のある重要参考人に対し、何の措置も取らず自殺や逃亡を許してしまった場合の事を考えると、それを防止するためには何ができたのかということも考える必要があるでしょう。
落合先生が同じ立場におられたならば、どのような判断をされたのかお考えを伺いたいです。

というコメントがありましたが、在宅での取調べ中ですから、逃亡することを防止するには限界があり、特に考慮すべきは自殺防止ということでしょう。
私も、いまではしがない弁護士になり、ブログで思いついたことを書き綴る程度になってしまっていますが、かつては、日夜、取調べをおこなっていた気鋭の(?)取調官であり、自殺防止対策ということを真剣に考えるべき事件を取り扱ったこともありました。
その際、注意していたのは、

1 相手の人格を尊重し、傷つけない
2 厳しく追及する場面があっても、前向きな気持ちになれるように留意し、特に、帰宅する際に絶望的な気分のまま帰さないように注意する
3 孤独にしない、そのために家族等の協力も得る

といったことでした。否認している被疑者を前にすると、つい頭に来たり感情的になったりして、相手の人格を傷つけるようなことを言ってしまいがちですが、そこはぐっと我慢しないと、そういった言動が影響して自殺という最悪の事態になる場合があり、また、そこまで至らなくても、その後の取調べに深刻な支障を来す恐れがあります。被疑者は、自分の人格を傷つけるような取調官に、真相を話そうとはしないものです。
また、自殺の原因には様々なものがあると思いますが、前向きな希望を持っていればなかなか自殺はしないものと思われ、事件の中で苦しい、切ない気持ちになることがあっても、どこかで希望を持ち前向きになれるよう、取調官からも注意して話すようにすることで、完全には防止できないとしても、自殺防止には役立つ可能性が出てきます。
被疑者によっては、1人暮らしで話せる近親者もいない、ということもありますが、できるだけ家族や職場の関係者等にサポートしてもらい、孤独の中で絶望してしまう、ということがないよう、取調官にも細心の注意が求められると思います。
上記のエントリーで取り上げた大阪府警の不適切(違法である可能性も高い)ケースでは、上記の3に関し、警察官が同室して監視してしまうという、事件自体がつぶれかねない措置を講じてしまったものですが、他にできることがないかどうか、もっと検討すべき余地はあったのではないかと感じています。