特集ワイド:パソコン遠隔操作事件、誤認逮捕次々 虚偽自白からの護身術

http://mainichi.jp/feature/news/20121106dde012040019000c.html

石川議員は「逮捕されると自分の人生などどうでもよくなり、周囲の人に迷惑をかけるまい、とばかり思い始める」と証言する。だから他人を必死でかばい、偽の自白をするのではないか、と。今回、幼稚園に襲撃予告メールを送った容疑で逮捕された男性(28)は、同居女性をかばおうとして容疑を認めたとされる。
また石川議員は「長時間、担当検事と1対1の取り調べが続くと、楽に乗り切るために相手と良好な関係を維持しようとして、相手の意向に沿った供述をしようとする力が働くものだ」と話す。

私も、かつては取調官だったわけですが、否認していれば何とかなるのではないか、と被疑者が思っている限り、割れない(自白しない)もの、と取調官は考えますから、否認している被疑者に対しては、できるだけ濃密な人間関係を持つように努めつつ、外堀を埋め、内堀を埋め、という感じで、じわじわと心理的に逃げ場をなくすような取調べを続けて、自白してこの状況を早く終わらせようと考えるよう、仕向けるものです。被疑者の経歴、家族関係、交友関係、趣味、嗜好、物の考え方、長所、短所、過去の事件での供述状況など、事件にもよりますが、必要に応じて、徹底的に調べ上げた上で取調べに臨みます。割れるタイミング、というものもあって、これは割れる、と感じれば、徹底的に畳みかけて勝負をかけることもあります。
こうした取調べが、実際にやっている被疑者に対する、適切な働きかけになれば信用性のある自白を得られることにつながりますが、やっていない被疑者に対する、過度のプレッシャーになれば、虚偽自白を産み出すことにもなります。取調官というものは、この被疑者はやっている、必ず自白させる、という確信、信念を持って取調べに臨むもので、そういった確信、信念は、やっていない被疑者の、「やっていないこと」への客観的な目を曇らせてしまいがちであるため、厄介です。
従来の取調べは、密室での、濃密なものであっただけに、一旦、虚偽自白を産み出してしまうと、嘘が嘘を呼ぶようなことになりやすく、その意味で、かなり危険なものであると言えるでしょう。取調べの可視化は、具体的、詳細な自白獲得による真相解明機能を低下させる性質を持つことは否めませんが、そういったデメリットを大きく上回る、虚偽自白を防止し、後に、供述経過をトレースできることで供述の信用性を適切に判断できる大きなメリットを持っているからこそ、導入すべきであると、私は考えています。
やはり、制度改革によって、国民を虚偽自白といった不幸な事態に陥らせないようにすべきでしょう。