元従業員に無罪−まんのうの温泉施設売上金着服

http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/article.aspx?id=20080510000142

裁判は、横領の直接証拠や売上高の資料がなく、着服総額について検察側は、推計した売上高と被告が管理していた当時の売上金との差額から約4200万円と算出。弁護側は「横領の回数も不明確な上、着服額も概算」として無罪を主張していた。
判決理由で菊池裁判長は、入浴料をレジから抜き取ったとされる横領の手口について「レジのトレイの保管状況などからほかの者でも可能」と指摘。着服額の推計方法については「経営の悪化などが考慮されておらず、確実な横領金額とは到底認定できない」と述べ、「証拠は被告人が横領を行ったと考えても矛盾しないという程度にすぎない」と結論付けた。

実際、通常の横領事件で着服回数などが特定されないケースはないといい、捜査関係者からも「この手法は厳しいのではないか」と危ぶむ声が漏れ聞こえていた。ほかの従業員らの証言などにもあいまいな点がみられ、裁判所は検察側の描いた構図を認めなかった。

この種の態様の横領事件では、個々の横領行為というものが特定できないと、通常は、少なくとも起訴はしない(できない)ものです。起訴したい、という気持ちはわからないではありませんが、「推計した売上高と被告が管理していた当時の売上金との差額から約4200万円と算出。」という手法は、刑事としての横領事件の立証としてはかなり無理があり、起訴の在り方にかなり問題があった事件ではないか、と思います。こういう起訴が、決裁官の決裁を経てそのまま通ってしまう検察庁というものについても、率直に言って恐ろしいものがあり、背筋に冷たいものが走るような気がします。
起訴検察官だけでなく、決裁官も一緒に、「法務総合幼稚園」あたりからやり直したほうがよいかもしれません。

追記:

あくまで可能性ですが、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20071006#1191631385
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070218#1171761610

でコメントした募金詐欺の起訴例に影響を受けた起訴かもしれない、と思いました。
募金詐欺事件のほうも、まだ1審判決が出ていないようですが、そもそも罪名が異なり、犯行の手口も証拠構造もかなり異なっているはずで、単純に同列に論じようとしたのであれば、あまりにも乱暴すぎるでしょう。