新司法試験疑惑 不信ぬぐう再発防止策を講ぜよ(7月15日付・読売社説)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070714ig91.htm

解任された教授は、行政法が専門で、司法試験で全員に課すことになっている「論文」問題を作成した。その後、試験までの間に、自分の教え子らを集めて、勉強会を7回開き、論文問題に類似したテーマの解答指導などをした。

教授の解任で幕引きが図られたようですが、試験の公正に影響を及ぼしたのではないか、という点が、うやむやになってしまった、という疑念が払拭されたとは到底言えないでしょう。常識的に考えて、試験問題の作成者が行う「勉強会」に参加して、上記のような指導を受ければ、受けていない人よりも受けた人が有利になることは明らかです。そういう状態で行われた試験を、厳正に行われた公正なものと考えろ、ということ自体に無理があると思います。
2007年度の新司法試験において合格した慶應義塾大学法科大学院出身者は、今後、永遠に、不公正な状況下で合格したとささやかれ続ける可能性が高く、「教授」や慶應義塾大学法科大学院の責任には極めて重いものがあります。福沢諭吉先生も、お墓の中で泣いて憤っているかもしれません。
今さらこういうことを言っても空しいことですが、問題となった科目についての再試験を迅速に実施すべきであった、ということではないかと思います。それをしなかった法務省の責任にも重いものがあるでしょう。
司法試験予備校を忌み嫌い、「試験のための」教育とは一線を画していたはずでありながら、結局、予備校と変わらなくなり、試験委員に勉強会までやってもらうほど堕落した法科大学院というものを、今後、存続させる意味、価値があるか、ということを、裁判員制度と並べて真剣に検討すべき時が来ている、という感を深くします。
法曹養成の主たる機能は、やはり、戦前からの長い歴史と蓄積を持つ司法研修所が担うこととし、米国のパロディでしかない法科大学院は退場させ、これ以上、学生をはじめとする関係者を無駄に振り回さないようにする方向で再考すべきでしょう。