「検索サービスが取り締まられて良いか?」に関連して

http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/

の10月12日のブログで、上記の点について論じられている。問題意識や考え方の方向性は、私と共通していると思う。
その中で、

ロボット型については、機械的にリンク先を収集しているのであるから、リンク先のホームページの内容に対する認識はないと考えられるので、常に、幇助の故意(幇助意思)はなく、幇助犯が成立する余地はないと考えられる。
 これに対して、ディレクトリ型については、人が審査をしているのであるから、リンク先のホームページの内容を認識していないとは必ずしも言えない。そういう意味では、この場合には幇助犯が成立する可能性があるといえそうである。

とあるが、問題状況を、より明確にするため、若干、補足しておきたい。
 まず、ディレクトリ型については、確かに「人が審査」しているのであるが、審査の際に、「何をどこまで審査すべきか」という問題が、常についてまわる。児童ポルノを掲載しているとか、違法な物(薬物、銃器など)の売買を行っているとか、わかりやすいものは審査もしやすい。しかし、内容自体は、即、犯罪行為ではないものの犯罪につながりやすい要素が認められるとか、特定の売買等の行為について許可・登録が必要な場合にサイトを見る限りでは許可・登録の有無が不明であるなど、いわゆる「グレー」なものについて、どう対応すべきかは、非常に悩ましい。また、サイトの構造が重層的で、「深い」部分に、いろいろなコンテンツ等が含まれている場合、審査にあたって、どこまで見て行くかという問題があるし、それとも関連するが、リンクをはっている場合、リンク先について、どこまで審査の対象にするか、という問題もある。一口に「審査」と言っても、実際に行う立場としては、悩ましい関門がいくつも待ちかまえているのである。
 審査の結果、あるサイトを掲載すると決まっても、そのサイトが、審査後も、一定の内容を維持しているとは限らない。子供の日常生活を掲載した、ほのぼのとしたサイトだったものが、いつの間にか児童ポルノ愛好者が集うサイトに変貌しているかもしれない。審査後、何をどこまで見て行くか、という問題もあるのである。
 また、ロボット型の場合、ロボットが拾ってくる部分について、人が介在しない以上、「拾ってくる」ところまでは、少なく法的責任は発生しないと思われるが、拾ってきたものについて、特定の上、削除等を要請されるという事態が、近時、激増している。検索エンジンでは、一般的に、短い文章付きでサイトを紹介する体裁をとっている場合が多いが、そういった文章について権利侵害の疑いがあれば、運営者として放置することはできないし、リンク先について権利侵害の疑いがある場合、削除を要請された立場としては、「単にサイトの存在を指し示しているに過ぎない」と割り切って放置できるか、というと、やはり悩ましいものがある。刑事の裁判例の中には、リンクをはる行為についても幇助行為と認定したものがあり、「放置」の態様によっては、幇助として刑事責任まで問われる可能性を、完全には排除できないというのが現在の日本の現状である。
 私が、winny幇助公判について、強い問題意識を持ちつつ注視している背景には、日本におけるこういった現状があることを指摘しておきたいし、近日中に出版予定のプロバイダ責任に関する書籍中でも、そういった問題意識に基づいて小論を執筆し、また、座談会にも臨んでいるのである。