http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0610/27/news029.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0610/27/news029_2.html
なかなか参考になる記事ですね。
YouTubeで言えば、映像ファイルをYouTube上に置いた時点で「送信可能化」行為は終了する。そのため、例えば、テレビ局が権利を持つ映像ファイルを無許諾でYouTube上に置いた第三者は、テレビ局の送信可能化権を侵害した、といえるだろう。
その後、ユーザーの求めに応じてYouTubeから動画が送信されることにより、自動公衆送信が行われる。YouTube上の動画にリンクを張り、その動画に対するアクセスを増やす行為は「自動公衆送信のほう助」に当たるようだ。小倉弁護士は「リンクが張られることにより公衆からの送信要求が実際に増加したのであれば、客観面からいえば、リンクを張られることにより、自動公衆送信がほう助されたということになります」と説明する。
つまり、YouTubeの違法動画にリンクを張り、結果的にその動画へのアクセスが実際に増えた場合は「自動公衆送信権侵害のほう助」にあたり、故意などの主観的な要件が具備されるならば、違法と考えられる、という見解だ。
送信可能化、自動公衆送信については、正にその通りだと思うのですが、リンクを張る行為が、刑事上、「自動公衆送信のほう助」に該当するかどうかについて、私は、以前から疑問を持っています。
「自動公衆送信」自体は、張られたリンクをたどってアクセスしてくる人々とは無関係に行われているものであって、リンクが張られているからアクセスしてくることで、自動公衆送信が、より容易になる、幇助される、という関係があるのか?と思っています。
「送信要求の増加」程度で、自動公衆送信がより容易になったと、少なくとも刑事上で言ってしまって良いのか?と思うわけです。
記事でも、
日本の著作権法では、著作権侵害コンテンツをダウンロード・視聴するだけでは罪に問われないため、動画の視聴自体は合法となる。
とあり、正にその通りですが(一般的な解釈としては)、上記のような論法をあてはめると、ダウンロード・視聴自体により、「送信要求が増加」する以上、そういった行為自体が、自動公衆送信幇助に該当するということになりかねないでしょう。幇助犯の成立範囲が曖昧になり、かつ、無限定に広がって行く恐ろしさを感じずにはいられません。
これが、自動公衆「受信」という話であれば、リンクを張ることで「受信」が容易になっていると言えるように思いますが、問題は「送信」であり、本当に容易になっているのか、そういう関係に立つと言えるのか、疑問です。
過去の裁判例で、リンクを張った行為が、わいせつ物陳列罪の幇助犯に問われたものがあり、それはそれとして大いに問題がありますが、その事件では、リンク行為により、「陳列されているものを、不特定多数がより閲覧できるようになる」という関係がありました。理論的には、リンクを張る行為により「陳列」行為自体が何ら容易にはならないだろうという強い批判がありましたが、実際面において、上記のような関係(リンクが張られていることによりわいせつ画像が閲覧できる)があったことは事実です。犯罪成立上、実質的に、「陳列したものが閲覧される」ということが、一体のものとして捉えられており、そこに、幇助犯が認められる実質的な根拠があったのではないかと私は考えています。
著作権侵害についても、そのアナロジーとして考えれば良い、と割り切ってしまうのは簡単ですが(捜査機関はそのように割り切る可能性が高いでしょう)、私は、そう割り切ってしまってよいのか、いまだに疑問を感じており、解消できずにいます。
一貫性のない、矛盾したことを言っているかもしれませんが、よくわからないので、引き続き検討してみたいと思っています。