「力道山を刺した男 村田勝志」

 

プロレスラーの力道山が、酒場でのトラブルから刺され、それが原因で死亡したことは有名でいろいろと語られてきましたが、刺した側については、断片的な情報しか出てこなかった印象があり、本書をたまたま目にして興味を感じ、通読してみました。

日本の暴力団は、博徒、的屋、愚連隊の3系統から成るとされ、私自身、それなりの知識はあるのですが、愚連隊というものは具体的にイメージしにくいものがありました。本書では、そういう愚連隊の実態や、どのようにしてヤクザとして大成(?)していくか、といったことが、村田勝志や周辺人物の姿を通して描かれていて、こういうものだったんだなと、具体的なイメージを持つ上で参考になるものがありました。

今は、反社会的勢力を社会全体で排除していく大きな流れになっていますが、かつての、昭和30年代やその後の昭和当時の日本では、カタギと反社会的勢力(という言葉自体がありませんでしたが)の境目が不明確で、前者と後者が、行ったり来たりしつつ、また持ちつ持たれつで生きていた、そういう時代だったように思います。そういう中で、村田勝志のような人物が、ヤクザとして周囲から評価され、破天荒ながらヤクザらしく生きて死んだ、そういう生き様が本書では赤裸々に描かれていて、なかなかおもしろく読みました。