「無人島のふたりー120日以上生きなくちゃ日記ー」

 

昨年、惜しくも亡くなった直木賞作家の山本文緒氏の闘病記、日記、エッセイ(ジャンルにうまく当てはまらない)です。

こういった闘病記は結構あって、私も、過去に複数読んだことがありますが、肩に力が入った感じのものが多い印象があります(性質上、やむを得ないと思いますが)。

山本氏の本書では、そういった力の入りかたは特に感じられず、余命宣告を受け、当惑しながら身辺整理を行い、様々な思いを抱き、生へ向けた淡い期待も抱きながら、徐々に死へと向かっていく、その短い日々を、作家らしい鋭敏な感覚、観察眼をもって書きつづられています。

私自身、山本氏の著作を読んだのは、本書が初めてだったのですが、物の見方、感じ方が鋭く、遅ればせながらその著作を読んでみたいと感じましたし、惜しい作家を失ったものだとも感じるものがありました。

誰にも、いずれ来るその日を考える上で、読む意味、価値のある1冊だと思います。