ルバング島から帰還した後の小野田氏の回想記のゴーストライターを務めた著者によるもので、小野田氏と過ごした日々が赤裸々に綴られています。
小野田氏が帰国した当時、私はまだ子供でしたが、日本中が熱狂していた様子は今でも覚えており、実家がある広島でも小野田氏に関する展覧会が開かれて、親と一緒に行って、小野田氏がルバング島で使っていた道具等を、子供心に物珍しく見たことが思い出されます。
小野田氏自身が戦争の犠牲者だと私は思うのですが、小野田氏らがルバング島潜伏中に多数の島民を殺傷した事実は拭いがたい汚点と言うしかありませんし、本書で描かれているような家族も含む醜い姿には、一方的な英雄視の持つ危険性を感じるものがあります。「幻想」というのは、そういう意味で捉えられるべきでしょう。
戦争が狂気を生み、狂気が人を狂わせる、そういう大きな教訓を、本書から読み取るべきではないかと感じました。