「清六の戦争 ある従軍記者の軌跡」

 

 毎日新聞の連載が書籍化されたものですが、私自身、連載を読んでいたこともあり書籍化を知って興味を感じて読みました。連載よりは大幅に加筆されていて、もしかしたら書籍のほうが先にあって、そのエッセンスが新聞に連載されたのかもしれません。連載を読んでいた人でも、大幅に中身は増えていますから本のほうを買って読む意味、価値があります。

新聞記者である著者の血縁者が、苦学の上、毎日新聞の前身で記者を務め、フィリピン戦線に従軍して非業の死をとげるまでを追ったものですが、資料を丹念にあたり取材も重ねて、克明にその軌跡を辿っていて、戦前、戦中の新聞記者の生涯としても読み応えがありました。

農業に強い関心を持ち、その分野に専門性ある記者として活躍していたのが、戦争の激化につれ次第に従軍記者としての活動が増えて、最後にはフィリピン戦線で悲劇的な死を遂げた、その生涯には、同様の道を辿らざるを得なかった多くの民間人の生涯を思わせるものもあって、読後感には重いものがありました。

平和を維持することの重要性、難しさを考える上で、良き材料になる一冊だと思います。